偉大なスターたちの訃報に、日本中に衝撃が走った2020年。思い出されるのは、決して色あせない数々の功績と、人々に元気を与えてくれた笑顔。そんな故人と親交が深かった方々から届いた、愛あふれるメッセージを紹介。題して、「盟友がスターへ贈る、最後のラブレター」ーー在りし日の姿に、心からの哀悼の意を表して。
■岡江久美子さん(享年63・女優・4月23日没)へ。真矢ミキ(56・俳優)
その日、岡江さんの笑顔が一番輝いた。
10年以上前、岡江さんと手塚理美さん、そして、理美さんの息子さんと私は食事を済ませ、カラオケ屋さんに行こうと移動手段を考えていた。
「タクシーも来ないし、どうする!?」チャキチャキの江戸っ子を絵に描いたような岡江さんは言った。
そんなとき、カ、カンカンカンと素朴な東急大井町線の踏み切りが私たちの前で閉まりホームに電車が入っていくのが見えた。プシューと音を立て電車の扉は開く。
“さすがに反対側の踏み切り待ちだし、次なる電車……”と思っていた矢先、「みんな! PASMOとか出して! イケる、行くよ!」と言い放つと、猛ダッシュで岡江さんはホームに向かっていった。
“学生時代の放課後ですか!?”ってくらいのダッシュで岡江さんの後に続く勇ましい女優陣。ピィィ〜とホームに鳴り響く警告音と共にドアは閉まり、気づけば無事、私たちは乗車していた。
岡江さんのあの日の笑顔ほど忘れられないものはない。
「良いね〜、全員あそこでパッとパス出して乗れるって! 格好いい女優たちだね〜」とご満悦の岡江さんだった。“自分の友に間違いはなかった”と言わんばかりに。
以前ケビン・コスナーをセントラルパークで見かけた人が、“Are you Kevin Costner?”と声をかけたら“Sometimes!”と言われたと聞いたが、岡江久美子さんも然り。普通の人として存在することを誇る、視点の格好いい女優だった。
本格的な冬を迎え、そろそろ貴方のあんな笑顔に会いたい。
「女性自身」2021年1月5日・12日合併号 掲載