「今のこの東京を撮らなければ、という使命感で撮影してきました。だから被写体となっている、街の人々に対して批判的感情は一切ありません」
そう語るのは、写真集『東京、コロナ禍。』を昨年発表した初沢亜利さん。前回の緊急事態宣言下のような静けさは街になく、若者の気の緩みを批判する声も多いが、街を見つめ続けた初沢さんの視点は違った。
「今どういうふうに生活するのが正解なのか。それは後になってみないとわからないことですよね。街の中では、生活を守っていかなければならない人々が当然そこかしこに存在しているだけなのだと感じます。問われているのは、命と命を天秤にかけた問題だと思うんです。決して命と経済ではない、と」
一年を通して街に変化があったかと尋ねると。
「そう簡単に変わるものではないんだなというのが実感。春は街中が静まり返っていたけれど、夏や秋にはいつもどおりの人出で。科学的根拠よりも同調圧力のほうが、人々の意識や行動に影響力があるんだと感じましたね」
緊急事態宣言が非日常そのものだった第1波と異なり、慣れも出てきた現在。宣言発令の効果にも疑問が生まれる今こそ、感染拡大防止に政府の手腕が試されているのではないだろうか。
「女性自身」2021年2月2日号 掲載
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