家の中で楽しめるエンタメや流行を本誌記者が体験する“おこもりエンタメ”のコーナー。今週は、’90年代~’00年代初頭に起きたミニシアターブームで、記者の記憶にある作品のひとつ、スペイン映画の巨匠ペドロ・アルモドバル監督の『オール・アバウト・マイ・マザー』をご紹介します。
■『オール・アバウト・マイ・マザー〈ニューマスター版〉』2月17日(水)発売。Blu-ray5,280円、DVD4,180円(ともに税込み)。発売・販売/キングレコード
なんと今回、監督のデビュー40周年記念で『オール・アバウト・マイ・マザー〈ニューマスター版〉』が発売されることに。女性の顔がドーンと大きく出ていたポスターで、トランスジェンダーが登場していたような……といった記憶しか残っておらず、新作を楽しむ気持ちで観賞しました。
主人公は17歳の息子を交通事故で亡くしたマヌエラ。息子の死を元夫に伝えようとマドリードからバルセロナへ移動し、そこで出会ったシスターや舞台女優たちとの交流が描かれていきます。
色彩の魔術師と呼ばれる監督だけに、色の使われ方がとても印象的。なかでも赤は血の比喩ともいえます。登場する母子は血縁関係があっても馬が合わなかったり、ましてや夫であり父である人たちは認知症や、「疫病神」と言われたりでほぼ不在です。
そして亡くなるシスターの子を育てるのは血縁関係のないマヌエラ。同性愛者であることをカミングアウトしている監督の作品にはLGBTQのいずれかにあたる人物がたびたび登場しますが、本作ではセクシャリティや血縁関係を超えた家族像をメッセージとして投げかけています。
約20年ぶりの観賞となりましたが、名作は時代を選ばないということを実感した作品でした。
「女性自身」2021年2月23日号 掲載