米アラスカ州アンカレッジでヒグマに遭遇した男性が生還したとABCなど主要メディアが報じ、話題となっている。
アレン・ミニッシュさん(61)は18日、人里離れた山林の中、たった1人で土地の測量を行っていた。GPS機器に数値を入力し、ふと顔を上げるとおよそ9メートル先に大きなヒグマが歩いていたという。
「僕がクマを見たのと同時に、あちらも僕に気が付きました。恐ろしい瞬間でした」
翌日、入院している病室からの電話インタビューでミニッシュさんはその時の様子をABCに振り返った。
ミニッシュさんが以前見たことのある136kgのツキノワグマよりも大きかったというそのヒグマは、ミニッシュさんに向けて突進し、あっと言う間に距離を詰めてきたという。
咄嗟に木を盾にしようとしたが、ヒグマは木を突き倒してミニッシュさんに肉薄。ミニッシュさんは測量ポールの尖った先端をヒグマの方に突き出したが、それも難なく倒され地面に転がされてしまう。
「クマが襲いかかってきたとき、クマの下顎を掴んで押し戻そうとしたんですが投げ飛ばされてしまい、顔を押さえつけられて軽く噛まれました。その直後にもう一度噛まれて、骨が砕けるのがわかりました。右の頬は潰れていましたね」
クマが口を離した瞬間、ミニッシュさんはうつ伏せになり頭を両手で押さえて身を守る態勢を取った。その様子を見たクマは、ミニッシュさんに敵意がないと悟ったのかそのまま踵を返して森の奥へと帰って行った。
出血の止まらない頭部に測量用ベストとTシャツを巻き、911に通報。仕事道具のGPS機器から現在地の正確な座標を伝えることができたが、それでも救助隊の到着まで59分かかったという。ミニッシュさんは「ヒグマがとどめを刺しに戻ってくるのではないかと気が気でありませんでした。でも、体を起こそうとすると失血でめまいがしてしまって」と恐怖の1時間をABCに語った。
ミニッシュさんは医療用ヘリココプターで搬送され、4時間半の手術で一命を取り留めた。頭蓋骨が見えるほどの裂傷に加え、顎の骨も折れており、眼球も損傷を受けていたという。
地元ニュースサイトAlaska’s News Sourceによると、術後の経過は良好で、ミニッシュさんは1週間も経たずに仕事に復帰する予定だそう。
40年に渡り測量士、エンジニアとして働いてきた彼は、クマとの遭遇は何度も体験してきたが、これほどの危機に陥ったのは初めてだったと同サイトに答えた。
「4歳から6歳のオスのクマで、彼は何も間違ったことはしていない。ただ歩いていただけ。間違った場所、間違った時間に出会ってしまっただけなんだ。クマ鈴もつけてはいるけれど、GPSの音がうるさくて普段は気に留めてもいなかった。銃も車にあったけど、あまりにも早く距離を詰められてしまったから意味を成さなかったね」
さすがに事故当日は襲いかかるクマの幻覚に悩まされたというが、その翌日には看護師相手にジョークを飛ばしていたというミニッシュさん。
「今後は1人では山に入らないようにするよ」と、仕事を辞めるつもりは全くないようだ。