衛生管理の基準が厳しくなった「あちこーこーの島豆腐」=1日、那覇市久茂地のデパートリウボウ 画像を見る

国際的な衛生管理基準「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理が1日から義務化され、沖縄特有の食文化である、温かいまま販売する島豆腐やゆし豆腐の管理基準が厳しくなった。豆腐の温度を55度以上で管理する必要があり、55度を下回った場合は3時間以内に消費するか冷蔵保存が必要となる。基準の適用が始まった1日、県内のスーパーでは、温度基準を満たせずに業者が納品できないケースもあった。豆腐の製造業者は「あちこーこーの島豆腐が今後存続していけるのか」と不安も漏れた。

 

スーパーなどにあちこーこー豆腐を卸す製造業者は、55度以上が保たれているかを確認した上で店舗に納品する。店頭での販売は納品から3時間以内とし、時間内に販売できない豆腐は撤去される。

 

那覇や南部地域のスーパーに島豆腐を卸している、なかむら食品(南城市)。1日、工場から一番距離が遠い糸満市のスーパーへの配送で、豆腐の温度が55度を下回って納品できず、持ち帰るケースが出た。

 

アルミシートで豆腐を覆って温度を保つ、製造工程を変えるなど1カ月前から工夫を凝らして備えてきたが、配送距離と時間が課題となる。特に雨が降った日は温度の低下が早く、保温に苦慮する。担当者は「配送ルートを考えないといけない。真冬になると温度管理が特に難しくなる。保温のための設備投資も考えないといけない」と話した。

 

中部の製造業者は、通常の3分の1しか納品できなかった。工場からの距離が遠い店を中心に温度管理が難しく、豆腐を製造する量も半分に減らしているという。代表者は「(対応するには)新しい設備が必要だが、今後あちこーこーの島豆腐が存続するか不透明な中での設備投資はギャンブルだ」と話した。

 

湧川食品(西原町)は、一般販売向けの島豆腐は全て冷蔵のパックで出荷し、HACCP基準をクリアしている。ただ、給食センターや病院施設など業務用の島豆腐は、大きい容器に水を張った状態で納品しているため温度基準を下回る。今後は基準を満たすために業務用もパック対応に切り替えるという。だが、給食センター側からは大量のパックを開ける作業に手間がかかるなどの理由から豆腐の注文が減っており、給食のメニューから県産豆腐が減る懸念もある。担当者は「(豆腐が)給食に出る機会が減ってしまう」と危機感を示した。

 

1日、フレッシュプラザユニオンを運営する野嵩商会(宜野湾市)では島豆腐の納品量が通常の半分になった。売り場への納品時に豆腐の温度が55度を下回り、1丁しか納品できない業者もいたという。同社の仲村知充専務は「納品できずに島豆腐が品薄となり、消費者が買えない状況も出てくるだろう」と懸念した。

 

リウボウストアでは、島豆腐の販売時間を3時間から2時間半へ変更したほか、業者が入荷時間と入荷時の温度を記入する管理表も新しく取り入れた。リウボウ食品館の島袋雄太店長は「雨降りの渋滞時や冬場に温度管理が難しくなってくる。様子を見ながら対策を考えていく」と話した。

 

県食品衛生協会の伊志嶺哉(ちかし)専務理事は「最初から全て完璧に守るのは難しいかもしれないが、みんなで安全なやり方を目指していくことが重要だ」と話した。

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