芸能人の新型コロナウイルス感染が止まらない。8月だけで、北村匠海(23)や沢村一樹(54)などすでに50人近くの芸能人が感染。またABCテレビ制作のドラマで計13名の出演者やスタッフらによるクラスター感染が起きたことも記憶に新しい。
果たして、芸能人の“主戦場”であるテレビ局の感染対策は今どうなっているのか。あるテレビ局のスタッフは声を潜めながらこう打ち明ける。
「昨年春に初めて緊急事態宣言が発出された時は、多くの番組が出演者にリモート出演をお願いし、スタッフにもスタジオで撮影する時以外はテレワークを厳命。ほとんどのドラマも宣言中は撮影をストップすることに。その後は、“撮影時間に上限を設定”“貸し切り可能な広い敷地でのみロケを行う”など“新しい制作様式”を各局内で策定していました。
しかし時間が経つにつれ、仕事の仕方もコロナ禍前に戻りつつあります。スタッフのテレワーク率も下がり、今ではロケ番組も普通にやっていますよね。ドラマの撮影ではクランクイン前に出演者・スタッフはPCR検査を受けますが、エキストラや下請けスタッフには受けさせないところもあるそうです。正直、感染対策が完璧とはとても言い難い状況だと思います」
しかも現在流行しているのは発生当初とは比較にならない感染力を持つデルタ株。その感染力は季節性インフルエンザの4倍ともいわれ、飛沫感染だけではなく空気感染をも起こすと言われている。
そんなデルタ株にこれまでのテレビ局の感染対策は通用するのか。感染症に詳しいのぞみクリニック・筋野恵介院長は「感染対策としてやれることはやっていると思います」としつつも、こう語る。
「しかし、デルタ株の感染力は強く、医療現場ですらお互いにサージカルマスクをしていても感染するケースが出ています。ワクチンを接種していれば重症化はしませんが、感染しないわけではありません。テレビだとどうしても人と人が近くなることもありますし、現実的には感染を完全に防ぐのは難しいとは思います。
これ以上の対策をするのであれば、2メートル以上近づくときにはサージカルマスクに加えてフェイスシールドの着用などが必要かもしれません。また、現在の対策は新型コロナが出てきた初期に言われていた飛沫対策に重点が置かれていて、いわゆる空気感染の対策へのアップデートが十分にされているかもポイントです」
多くの番組が感染対策として取り入れてるのが、各出演者の間にアクリル板などのパーテーションを設置し、飛沫感染を防ぐというもの。しかし、これも決して万能ではないようだ。
「感染力の強いデルタ株では、特に換気が重要です。出演者がパーテーションで仕切られていても、滞留した空気を他の人が吸い込んでしまうと意味がありません。理想的には空気が滞留しないよう、上に吸い込まれるように換気できるといいです。それが無理なら、演者の後ろのセットの方に空気が流れるように換気をする、パーテーションをもっと大きくするなど、空気の循環も考えて対策しないと感染は防ぎきれないと思います」(筋野院長)
もはや従来の対策では太刀打ちできない脅威のデルタ株。しかし、そんななか日本テレビは今年も『24時間テレビ44 想い~世界は、きっと変わる。』を放送している。同番組のHPでは、募金活動に協力する団体へ「来場者が密になるような環境は避けてください」「募金を直接手で預かる・渡すなど接触を伴う行為はNG」など、感染対策の徹底を呼びかけているが……。
「恒例のマラソン企画は、観客の密を防ぐために、出演者は公道を走らず、会場の両国国技館も無観客に。放送前日から主なスタッフや出演者にはPCR検査に加えて、抗原検査が実施されるそうで、日テレは自信を持って感染対策をしているようです。しかし、無観客とはいえ、放送当日は国技館に500人以上のスタッフが集まり、全体に関わるスタッフの総数は2,000人とも言われています。いくらチャリティーとはいえ、この時期の開催に疑問を持っている人は少なくありません」(前出・テレビ関係者)
前出の筋野院長もデルタ株が大流行するなかでの『24時間テレビ』の開催にはこう警鐘を鳴らす。
「『24時間テレビ』もそうですが、大勢が一同に会するような今まで通りのやり方はあまりよくないと思います。例年のような大勢がステージに集まるという演出は無理があると思います。いつも一緒にいる同じグループのメンバーと接する分には、同じ単位の家族みたいなものなのでいいかもしれませんが、やはり他の大勢と接触するのはよくないです。
仮にマスクをしていても1メートル以内で長時間会話をするのは感染リスクが高いので、やはり大勢で集まることは控えるべきだと思います。やるならば、去年の1回目の緊急事態宣言のときのようにリモートによる出演にしたほうがいいと思います」
いくら感染対策を万全にしていても絶対にクラスターが起こらないという保証はない。果たして“愛”だけでコロナ禍を乗り越えられるのだろうか――。