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これまで禁じられていた看護師の日雇い派遣が、介護・福祉施設に限り解禁された。だが、 現役看護師たちはこれが全面的な日雇い派遣解禁につながることを危惧しているーー。

 

長く続く看護師不足をうけて、今年4月から介護・福祉施設にのみ、“看護師の日雇い派遣”が解禁になった。

 

日雇い派遣とは1日や数日などの短期間だけ派遣先の会社で働くこと。労働者保護のため、一部の業務を除き、原則禁止されている。法的に「日雇い」に該当するのは、「30日以内の派遣雇用契約」か「1週間に20時間未満の労働」のいずれかにあたる労働。だが、今年4月から次の条件の人に限って、介護・福祉施設に限った「看護師の日雇い派遣」が解禁された。

 

・60歳以上の人
・雇用保険の適用を受けない学生
・副業として従事する人(本業の収入が500万円以上の人)
・主たる生計者以外の人(世帯収入が500万円以上で、配偶者や親の収入が家計の中心になっている人)

 

さらに現在、コロナワクチンの接種会場でも、すでに看護師が日雇い派遣で働いているという。

 

「本来、ワクチン接種会場は“医療現場”にあたるので、看護師の派遣労働はできません。でも、政府は来年2月までの特例措置として認めました。ワクチン接種は大切ですが、これを機に、なし崩し的に医療現場への日雇い派遣も解禁になるのではないかと心配です」

 

日本医療労働組合連合会の中央執行委員長で看護師の佐々木悦子さんはそう話す。看護師に限らず、日雇い派遣は「労働者の雇用が不安定になる」ため、’12年に一部の例外を除き禁止されたのだ。看護師の“日雇い労働”が禁じられてきた理由を佐々木さんはこう話す。

 

「看護の質が落ちるためです。医療や介護は医師や看護師、介護士や理学療法士などのチームで動くので、その日限りの日雇いでは、連携がとれずミスも起きかねない。また、看護師の労働環境の悪化も懸念されます。ただでさえ医療や介護の現場の労務管理はずさんなのに、日雇いは立場が弱く不当な長時間労働を強いられやすい」

 

【看護師派遣解禁までの流れ】

1986年:労働者派遣法施行。16業種限定(医療は含まれず)
1996年:派遣可能業種拡大。26業種へ(医療は含まれず)
1999年:派遣労働の原則自由化(医療など5業種のみ禁止)
2006年:介護・福祉施設などへの看護師派遣を解禁
2012年:日雇い派遣が原則禁止に
2021年:「介護・福祉施設での日雇い派遣」と「へき地等の医療機関への派遣」が解禁に。加えて「ワクチン接種業務への派遣」が’22 年2月まで限定的に解禁された

 

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