《2020年10月に私たちはウクライナのゼレンスキー大統領と夫人に対面し、ウクライナの未来について、彼らの希望と明るい見通しを知ることができました。今、私たちはその未来のために勇敢に戦う大統領とウクライナのすべての人々を支持します》
イギリスのウィリアム王子とキャサリン妃だ。2月26日、ツイッターにこう記した。
ゼレンスキー大統領は自身のツイッターで《ウクライナがロシアの侵略に勇気を持って立ち向かっているこの重要な時期に、ケンブリッジ公爵夫妻が我が国に寄り添い、勇敢な市民を支えてくれていることに感謝しています》と、ウィリアム王子夫妻に感謝の意を伝えている。
欧州王室の“反戦の輪”は広がり続けている。イギリスではチャールズ皇太子が演説でロシアを強く非難。エリザベス女王もウクライナへの人道支援に寄付を行った。
オランダのウィレム=アレクサンダー王とマキシマ王妃、スウェーデンのマデレーン王女、ノルウェーのマッタ=ルイーセ王女などが、SNSでウクライナを支持するメッセージを発信している。スペインのレティシア王妃は、ウクライナの民族衣装である「ヴィシヴァンカ」の刺繍入りブラウスを着用し、ウクライナへの連帯を示した。
ただ、日本の皇室がウクライナへの連帯を表明するのは難しいという。象徴天皇制に詳しい名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんはこう語る。
「皇室の方々がウクライナについて言及することは、政治的な介入と捉えられる可能性があります。日本政府の対応について肯定、あるいは否定していると受け取られてしまいかねないためです」
実は天皇皇后両陛下は、ゼレンスキー大統領とオレナ夫人と面会されたこともある。大統領就任からわずか5カ月後の’19年10月、天皇陛下の即位の礼に出席するため来日。両陛下は皇居・宮殿で大統領夫妻をにこやかに迎え、握手されていた。
在日ウクライナ大使館によれば、昨年の天皇誕生日にはゼレンスキー大統領が陛下に手紙を送るなど、交流が続いているという。一方で、雅子さま自身にとって、ロシアは幼少期を過ごされた思い出の場所でもある。
天皇陛下は今年の誕生日会見で「国と国との間では、様々な緊張関係が今も存在しますが、人と人との交流が、国や地域の境界を越えて、お互いを認め合う、平和な世界につながってほしいと願っております」と述べられていた。
「雅子さまは、ロシアとウクライナの情勢には以前から関心を持たれ、天皇陛下ともお話しになっていたと思います。天皇陛下の会見でのご発言にあった“緊張関係”は、ウクライナが置かれた状況を念頭においたものでしょう。一日も早くロシアが侵攻を中止し、ウクライナに平和が戻ることを願われているはずです。欧州各国の王室の“反戦の輪”に加わり、ウクライナの力になりたいという思いを強くお持ちでしょうが、声を上げることができないことに、葛藤されているのではないでしょうか」(皇室担当記者)
侵攻から10日間で、ロシア軍の攻撃により死傷した子供は、国連が確認できただけで数十人に上る。また、食料や飲料水の不足も起こっており、国内にとどまっている子供たちの健康状態も不安視されている。
ウクライナでは防衛態勢強化のため、18〜60歳の男性の出国は制限されている。そのため、女性や子供たちだけで国外へと避難し、家族が離れ離れになることも少なくない。なかには、12歳の女の子が幼い弟と妹を連れて国境を越えてきたケースもあるという。
雅子さまは’18年12月、55歳の誕生日の感想で次のように綴られている。
《最近、国内では、子供の虐待や子供の貧困など、困難な状況に置かれている子供たちについてのニュースが増えているように感じており、胸が痛みます。世界に目を向けても、内戦や紛争の影響が、特に子供を始めとする弱い立場の人々に大きく及んでいる現状を深く憂慮しております》
雅子さまは、内戦や紛争によって苦しい状況に置かれる子供たちに心を寄せてこられた。
「皇室に入られて29年、雅子さまは国際情勢に強い関心を寄せてこられました。地雷除去運動などに尽力した故・ダイアナ元妃のように、雅子さまも国際的な慈善活動や啓発運動をされたいお気持ちはずっと持たれていたようです。ただ、皇族としての制約、そしてご体調の問題もあり、思うように取り組めないことに歯がゆさを感じてこられたのではないでしょうか。ウクライナの戦火にさらされている子供たちのために“沈黙の祈り”を捧げるほかない状況に、忸怩たる思いを抱かれていることでしょう」(宮内庁関係者)