鮮やかに運転する石原さん 画像を見る

3月16日の午前8時。岡山市の運送会社「岡山スイキュウ」の倉富物流センターの広大な駐車場では、数十台もの大型トラックが出入りを繰り返し、早朝の冷気を吹き払うほどの活気にあふれていた。

 

「今日の荷物の量は?」
「ちょっと多めじゃのう」
「よーし、張り切っていこう!」

 

1階の事務所で体調チェックやアルコールの呼気検査をしながら、配送スタッフと丁々発止のやりとりをするのは、同社ドライバーの石原麻衣子さん(43)。

 

この業界での女性比率は2.4%と依然として低く、8年前から国土交通省でも女性トラックドライバーを、通称“トラガール”と呼び、さまざまな普及の取り組みを促進してきた。屈強そうな男性ドライバーが多いなか、スレンダーな体躯に鮮やかなライトブラウンの髪をした彼女は、やっぱり目立つ。

 

「これから、まずは荷物の積み込み。この作業からドライバーの1日が始まります」

 

点呼を終え、体育館のような冷蔵倉庫に入ると、石原さんは、フォークリフトで次々と運ばれてくる商品を、自らパレットを押してトラックの荷台に積み込んでいく。冷凍コロッケやギョーザなど、ふだんスーパーなどで見かける商品ばかりだ。多い日は1千ケース、13トンもの積載量にもなるという、かなりの重労働。それでも、最後にはていねいに手積みをしながら、

 

「奥から高いものを積み込んでいくのがコツ。パズルのようにピタッと収まったときは快感です(笑)」

 

積み込みを終えると、早速、全長12m、11トンという大型トラックの運転席に乗り込んだ。そう言うや、実に巧みな運転ぶりで、ほかのトラックの間をスイスイと走り抜けていった。

 

石原さんは、昨年10月に行われた全日本トラック協会主催の「第53回全国トラックドライバー・コンテスト(ドラコン)」で、女性部門1位となった。つまり、日本一のトラガールだ。

 

運転技能などを競うドラコンでは、これまで大手が上位を独占してきたこともあり、従業員数600人弱という地方企業のトラガールの快挙に、マスコミでは「中小企業の星」という見出しも躍った。

 

「ドラコン優勝は、10年前にプロジェクトチームができて以来の悲願でした。石原さんは、ママさんドライバーとしても、ほかのトラガールに夢を与えてくれました」

 

チーム監督の増田修一さん(48)は、満面の笑みで語った。

 

15歳、13歳、12歳と、3人の子供を育てるシングルマザーでもある石原さんの、今までの奮闘を語ってもらった。

 

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