米国の高速道路には「カープール車線」というものが設けられている区間がある。別名は「High Occupancy Vehicle(HOV)Lane」。規定の人数以上が乗る車とバス、オートバイのみが走行を許可されている車線を指す。この車線を走ったことで違反切符を切られた妊婦が裁判で争う姿勢を見せている。NBC5 Dallasなどをはじめ、全米で報じられている。
テキサス州在住のブランディ・ボットーネさんは高速道路635号線を運転中、カープール車線の違反者を取り締まる検問所で止められた。
警官に「乗っているのはあなただけですか?」と質問されたボットーネさんは「いえ、2人よ」と答えた。「もう1人はどこに?」とさらに尋ねられ、ボットーネさんは「ここ」と、自身のお腹を指さしたという。彼女は妊娠34週目だった。
警官は「胎児は乗客にはカウントできない」と、215ドル(約3万円)の違反切符を切ったとNBC Dallasは一連の経緯を伝えている。
「政治的なことを言うつもりはないけど、ロー対ウェイド判決の流れがある以上、この子は1人の赤ちゃんとしてカウントされるのよ」と、ボットーネさんはNBC Dallasなどの取材に対して主張した。
先月末、米国の連邦最高裁は人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆し、中絶は殺人と捉える保守派はこの判断を歓迎した。テキサス州は保守的な思想を持つ人が多い州であり、胎児を人として認めているが、交通法ではこの考え方は適用されていない。
ボットーネさんは「法廷で争います」と、Washington Postの取材に対しコメントしつつ、「1つの法律が言っていることを、別の法律が否定しているのはおかしいとしか思えません」と怒りを露わにした。裁判は7月20日に予定されているが、ボットーネさんの出産予定時期とほぼ重なるという。