今年で“46歳”になる美浜原発3号機(写真:共同通信) 画像を見る

「この冬、最大で原発9基の再稼働を進めます」

 

7月14日、岸田文雄首相はこう語った。現在、休止中の原発も順次再稼働させ、9基が同時に稼働している状態を作るという。だが、前日の13日には、東電の旧経営陣4人に対し、東京地裁が合計13兆円超の損害賠償を命じる判決を下したばかりだった。

 

その理由は、「国の地震予測に基づき、15.7メートルを超える津波を予測できていたのに対策を怠った」ためだという。つまり、経営者らの怠慢が福島の過酷事故を招いたと裁判所は判断したのだ。再稼働を急ぐあまり、対策がいい加減になり、同じ過ちを繰り返すことにならないのか。9基の問題点を専門家と検証した(表参照)。

 

岸田首相が宣言「稼働原発9基」ここが危ない全リスト
画像を見る 【表解説】再稼働9原発の問題点

 

■平均値超えは“想定外”

 

「すべての原発に言えることですが、原発がどれくらいの地震に耐えられるかを示す“基準地震動”の設定が非常に甘い。大飯原発(福井県)3・4号機の場合、関西電力が算出している地震動は856ガル。しかし、揺れの“ばらつき”(平均値を超える値)を考慮すると、1150ガルに跳ね上がる可能性もあるのです」

 

そう指摘するのは、数々の原発関連訴訟の弁護団長を務める井戸謙一弁護士だ。原子力規制委員会(以下、規制委)の「地震動審査ガイド」にも〈揺れのばらつきを考慮すべき〉と記されていた。しかし、関西電力はばらつきを考慮していなかったとして、2020年12月、大阪地裁は大飯原発3・4号機の設置許可取消の判決を下している。

 

「ところが、この判決のあと規制委は、『わかりやすくするため』と言って、設置取消の根拠となった地震動審査ガイドの文言から、ばらつきを考慮するという記述を削除してしまったのです」

 

ばらつきを考慮せず耐震対策を行った場合、平均値を超える揺れは“想定外”とされてしまう。懸念されるのが活断層の存在だ。

 

「大飯原発の非常用取水路の下には、活断層の疑いがあるF6破砕帯が走っています。専門家の間でも活断層か否かの判断が分かれていて、地層を3次元的に捉える“3次元の反射法地震探査”で調査すれば、すぐ判別できると専門家も指摘しているのに、関電は調査しないまま再稼働しようとしています」

 

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