《歌舞伎座三部、海老蔵平右衛門は本当に声が聞こえないところがあって驚いた。三味線が入るところがほぼ全滅》
《海老蔵丈は芝居に調和せず、声も響かず、襲名披露が不安になる出来……》
歌舞伎座で9月27日まで上演していた九月大歌舞伎『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場』で、観客から市川海老蔵(44)に対してSNSでブーイングが起きていた。
「問題視されているのは、海老蔵演じる平右衛門が妹の遊女・おかると会話する場面。兄妹の情愛と哀愁が描かれる大事な一幕なのですが、海老蔵が何と言っているのか、1階席でも聞き取れないと指摘されています」(歌舞伎関係者)
実際にこの芝居を見た演劇評論家の上村以和於氏は言う。
「声が小さいというか、もっと芝居と結びつけて言うと、声が弱いということですね。本来の平右衛門役は男らしくて元気がよくて闊達な人物。それが弱々しい声では、役としてふさわしくないのです」
今回の海老蔵の小さな声量に最初に怒ったのが、三部の主役・片岡仁左衛門(78)だったと前出の歌舞伎関係者は言う。
「仁左衛門さんは、昨今の海老蔵さんの言動にあきれた重鎮が次々と断るなか、團十郎襲名披露興行の出演に応じた数少ない一人。久々となる今回の共演で、海老蔵さんの真価を見極めようと思っていたようです。仁左衛門さんは最初の2〜3日、海老蔵さんの演技を見届けた終演後に彼を呼び出して『声が小さい』と諭したといいます。
ところが、海老蔵さんは『あれがリアルな芝居だと思うんです』と説明したそうなんです。仁左衛門さんは『理屈より、お客さんに聞こえるようにやりなさい』と一喝したと聞きました」
だが、翌日以降も海老蔵の声量は変わらないままだった。
「“最後の海老蔵”に傷がつかぬよう、あえて忠告した仁左衛門さんの気持ちを全然理解していないと、ほかの役者連中があきれ返っているのです」(前出・歌舞伎関係者)
後援会関係者は襲名の重圧なども影響しているのではと説明する。
「声が出ないことはご贔屓筋の間でも話題になっています。襲名披露の準備や練習に連日追われ、疲れもたまっているのだと思います。また、12月の襲名披露興行『團十郎娘』に長女を出演させるため、松竹から提案された今回の“最後の海老蔵”出演を承諾したという面もあり、本人的に気乗りしない部分もあったのかもしれません」
やる気の問題もあったのかーー。前出の上村氏は憂慮する。
「襲名を控えて忙しいから声が出ないならまだいいのですが。肝心の襲名披露興行では『勧進帳』『助六』など、長時間にわたる長いセリフがありますから心配ですね」
襲名披露興行口上に並ぶとされる希有な重鎮・仁左衛門の“はなむけの言葉”が今から気がかりだ。