クライマックスへ向け、ますます注目が集まる『鎌倉殿の13人』。ユニークなキャラでドラマを盛り上げる“北条家の父”が、ドラマのヒットと自身のハマり役の舞台裏を明かす。
「ドラマを見ている家族からは『ふだんと変わりないじゃない』なんて言われてます。『ああ見えて、俺はちゃんと芝居してんだよ!』と言い返してますけどね」
こう笑うのはクライマックスに向け盛り上がるNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で小栗旬(39)演じる主人公・北条義時の父、北条時政を好演中の坂東彌十郎(66)。
戦前、映画でも人気を博した歌舞伎俳優・坂東好太郎(享年70)の三男。‘73年、歌舞伎座『奴道成寺』で初舞台を踏んで以降、およそ半世紀にわたって敵役から老け役まで幅広い役柄を演じてきた大ベテランだ。
だが今日のように、お茶の間に名前と顔が広く浸透したのはおそらく初めてのこと。
「数年前に、三谷幸喜さん作・演出の歌舞伎(三谷かぶき『月光露針路日本 風雲児たち』)に出演させていただいて。そのとき彼に聞かれたんです。『映像作品に出る気はないんですか?』と。私は『機会があればやってみたいです』と答えましたけど……」
それから数年、今作のオファーの際、三谷からは「彌十郎さんの名前で世間をアッと言わせましょうね」と声をかけられたという。
「それを聞いて、楽しく仕事させてもらえるのかな、とは思っていましたが、まさかここまでいい役をいただけるとは。驚いています」
北条家を中心としたホームコメディ的要素が強かった物語序盤、ドラマ人気を牽引したのは、おちゃめでちょっとドジな時政だった。
本人いわく「本当の家族のような温かみのある撮影現場」で、6月には「長い俳優人生でも初めて」というサプライズも経験した。
「スタジオでカメラテストが終わったとき、宗時役の片岡愛之助さんが走ってきて、私を呼ぶんです。『父上、こっちこっち』って」
いぶかしく思いつつ、愛之助を追ってスタジオ前室に行くと……、そこには義時役の小栗旬、政子役の小池栄子(41)、実衣役の宮澤エマ(33)の、“北条家”が待ち構えていた。
「皆さんから『父の日、おめでとうございまーす!』と拍手で迎えられ、赤ワインのプレゼントをもらって。いやぁ、うれしかったですね。ちょうどそのとき、頼朝役の大泉洋さんが通りかかって『僕は入れないの?』と聞いたんです。すると、小池さんが『北条家のお祝いだから』と。そこにいた全員が大爆笑でした」
そんな“家族”から愛され慕われる父上だが、“息子”小栗の座頭ぶりには舌を巻いたと話す。
「小栗さんは、出演者はもちろん、大勢のスタッフ一人ひとりの名前をキッチリ覚えていて、誕生日にはお花をプレゼントしていました。自分が主役なのに、あれだけ周りの人たちに神経を使えるって、本当に素晴らしいなと思いました」
その気配りは、父上に対しても。
「映像に不慣れな私のことも、いつも気遣ってくれるんです。私が『いまの場面、大丈夫だったかな?』なんて、ちょっと不安に思っただけで、誰よりも早く察知してスーッと近寄ってきてくれて。『父上、もう一回やらせてほしいって言っても、大丈夫ですよ』なんて声をかけてくれる。いやぁ、大した“孝行息子”です」