「政治家引退という言葉を使ったことが、誤解を招いているのかもしれません。政治に関わらない人間になって、ゆっくりするんだろうなと思われてしまったみたいですから。でも、私としてはまったくゆっくりするつもりはない。明石だけでなく、日本の政治を変える役割を果たしていきたいと思っています」
そう語るのは、兵庫県・明石市の泉房穂市長(59)だ。
今年10月、自身への問責決議案について市議会議員らに「賛成したら承知せえへんぞ」「問(次の選挙で)落としてしまうぞ」などと暴言を吐いたと報じられた泉市長。その責任を取る形で来年4月の任期満了にともない政治家引退を表明していたが、11月10日の会見で新たに地域政党を立ち上げるとの報道が浮上。波紋を呼んでいた。
各紙の記事によると23年4月の明石市長選と市議選に向けて公募を行い、候補者を擁立する方針。会見では「将来的には当然、兵庫県知事選も選挙に入ってくると思います。加えて国政も当然、入ってきます」ともコメントしているとのこと。いっぽうで政治家引退の意向には変わりなく、今後は「心ある政治家をつくっていく」としているという。
泉市長といえば2011年の市長就任以降、18才までの医療費無料、中学の給食無料、おむつ定期便など5つの無料化を打ち出し、子育て支援に尽力した。それが評価され、子育て世代が続々と明石に転居。市長就任2年後の2013年には市の人口が増加に転じ、10年連続で右肩上がりとなった。税収は増え、市の貯金ともいえる基金残高は就任当初は70億円だったのが120億円に。 市がここまで潤った原因は、子育て支援予算を倍にした結果だった。
そんな泉市長が引退表明したかと思えば、一転して地域政党立ち上げるという。これからいったい、どこへ向かおうとしているのか。本誌は、地域政党設立の真意と今後の活動について話を聞いた。
「まだ市長の任期が半年も残っていますからね。まずはその間、さらなる子ども施策の拡充に全力をつくす。その上で次の市長さんに“たすき”をつないでいく。たとえば市会議員の方も過半数をとって、市長を応援するかたちにしないといけません。
そして候補者選び。私が市長になってから、他の街では『そんなことできない』と思いこまれていたことをやってきました。でも、それは“政策面では”です。
今後やろうとしていることは民主主義の根幹である選挙においても、明石発の“新しい形の選挙”を実現していくことです。普通の心ある市民が手を挙げて立候補して、ちゃんと当選する。そんな市民の意見が直接反映されるような選挙です。次の来年4月の市長選と市議会選挙では、ここを変えていきたいんです」