(撮影:御堂義乘) 画像を見る

『女性自身』年末年始号では、麗人・美輪明宏さんに“清く美しく生きるためのコツ”をテーマにインタビュー。ここでは「自分を見失いそうなとき」に思い出したいメッセージを紹介しますーー。

 

人間が生きていくうえでもっとも大変なことは、「感情」と「理性」を使い分けること。現代社会で感情と理性をうまく仕分けしながら、毎日の生活を送っている人はおそらく少ないでしょう。たとえば、“病気になりました”“経済的に大変なことになりました”“仕事で大きなミスをしました”など、何か大きな問題が起こったときに、泣いたり、わめいたり、さけんだり……。理性を失い、感情的になってしまう人のほうが多いのではないでしょうか。

 

人間は肉体と知性(精神)でできています。肉体は、よい食べ物をバランスよく食べていれば健康を維持できます。ところが、お酒を飲んだり、刺激物など体によくないものを食べていると健康を害し、病気になる可能性が高まります。それは精神にも同じことが言えます。

 

では、精神を健康的に維持するために必要な食べ物とは何か? それは芸術や音楽、スポーツといった文化です。文化にも質の高いもの、質の悪いものがあります。食べ物と同じように、質のよい文化に常に触れていれば、精神が“栄養失調”になることはありません。そうすると何かつらいことが起こっても、頭が冷静に物事の本質を捉え、問題の解決方法だけを考えるようになります。

 

こんな不安定な時代だからこそ、自分を見失わないことはとても大事。そのためには、精神が常に“冷静沈着”であることが欠かせません。そしてまわりに流されず、自分の感情を理性でコントロールする。感情に任せて行動すると、物事の判断を誤りますから。「頭は冷たく、心は暖かく」が大切です。

 

とはいえつらい現実に直面することはあります。でも、「黒があるから 白さが分かる」のです。“黒”というのは苦労の“くろ”。仕事、対人関係、病気、経済的な苦労など、苦労人であればあるほど、いろんなことを経験しています。それは同時に、苦労から脱出する方法も知っているということ。

 

苦しいことを経験し、どうやってそれを乗り越えてきたか。人生というのは、そういう脱出劇の繰り返しです。金銭的に散々苦労をした人が、その状態から抜け出して経済的に楽になったときは、人一倍お金のありがたみを感じるでしょう。

 

また、大病を患い、それを克服して健康になったときに、足が動く、手が動く、自分で何でも行動できるー、ふだんなら当たり前と思っていることが、ありがたく感じる。それは大病で苦しんだからこそわかるのです。

 

現在のロシアとウクライナの戦争のニュースを見ていると、この日本の平和という“白さ”のありがたみがわかるはずです。私は先の戦争を経験しています。広島、長崎に原爆が落とされ、多くの国民の命が奪われました。戦争は経済をひっ迫させ、食べる物もなくなり、世の中全体を“黒”にしてしまうのです。今、お茶わん一杯のごはんを口にしたときに、戦争のない平和のありがたみを身に染みて感じます。

 

“白さ”というのは、健康であったり、幸せや喜び、そして平和であるということ。今ある“白さ”の大切さをかみしめて日々を過ごしましょうーー。

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