「好きなものを食べて、どこにでも行けて、日本語が使える。全部あるからこそ、夫のおかげで今があると思えるようになりました」
ユーチューブチャンネル『ケイの日常~51歳の再出発~』を運営するケイさん(53)は、看護師として働いていたが、’01年に軍関係の仕事をしていたアメリカ人男性と結婚。夫の異動のためアメリカを中心に各地を転々とする暮らしを送っていた。ところが、異国文化は肌に合わず、思うような仕事もできず息が詰まってしまったという。
「どこに出かけるにも車が必要で、1日で用事を済ますことも難しい。日本の近場で何でもそろう感じが私は好きで。しかも、アメリカは家族ファーストで、息抜きしようと人を誘っても断られてしまう。食もまったく合いませんでした」
親や友人は日本にいるため、悩みを気軽に話せる相手もおらず、夫の転勤でいつか日本に帰ることを希望に生きていたという。
「47歳のときに、元夫が仕事を辞めたんです。その後、『アリゾナに引っ越したい』と言われて心がくじけました。私が働くにしても、50歳と55歳では違うと思い、離婚して帰国することを決めたんです」
夫に貯金はあったが、家族そろって帰国する場合は、ケイさんが養うことが条件となっていた。
「それはあまりにも不安でした。あと、夫の同業には高給で日本に転勤する家族もいて、ずっとうらやましいと思っていたんです。『日本に行くならケイが働いて』と言われたとき、バカにされたような気分になりました」
話し合いで離婚が決まるも、両国での手続きや、帰国準備、コロナ禍もあり、離婚が成立した’20年まで、1年ほどかかった。元夫は先に家を出ており、時間がある中で始めたのがユーチューブだった。
「離婚や帰国の報告を知人に届けるような感覚だったので、ここまで続くとは思っていませんでした」
引越し準備や離婚の心境などリアルな内容が受け、視聴回数が伸びると約3カ月で収益化。一緒に帰国した現在18歳の息子もたびたび登場し、日々の暮らしや就活、転職などの日常を配信し続け、現在、登録者数は2万人以上に。
「アメリカ暮らしや主婦の経験、自分ではなんでもないと思っていたことでも、発信すると反響をいただけるんです。50年以上生きてきて、何ひとつ役に立たないことはないんだと思いました」
並行して、看護師の仕事も再開。
「体調を崩したこともあって、正直きついこともたくさんあります。でも、今は働いて、稼いで、自分ですべて決められる生活を楽しんでいます。自分の責任で好きなことをしたかったんですね。仕事で社会的なつながりを持てたことで、今なら元夫が一緒でも生きていけたのかな、とも思います」
自分で決めて帰国したのだから、やりたいことをやる、という強い意志も。今後もユーチューバーと看護師の二足の草鞋を履き続ける。
「離婚を機にした、私のイチからの人生を残すことで、50代、一人でも楽しく生きていけることを発信していけたらいいなと思います」
■“熟年離婚”を考えているあなたへ
私が言うのもなんですけど、離婚をすすめる気はまったくありません。最後まで添い遂げることへの憧れもありました。私は専業主婦が合わず、異国で働く度胸もなかったんです。50代になって専業主婦から一人で生きていくのは正直、楽ではありません。でも、楽しめるとも思っています。
【PROFILE】
けい/’69年生まれ。’20年5月にユーチューブチャンネル『アラフィフ熟年離婚シングルマザーKei』を開設。現在は『ケイの日常~51歳の再出発~』として日々の暮らしを配信。