2005年までワカメちゃんの声を担当した野村道子さん(撮影:田山達之) 画像を見る

2月5日、アニメ『サザエさん』(フジテレビ系)で、フグ田タラオ役を担当していた声優の貴家堂子(さすが・たかこ)さん(享年87)が亡くなった。

 

「“また一人、家族のような仲間が亡くなってしまった”と、がくぜんとしました」

 

そう語るのは約30年にわたり、ワカメちゃんの2代目の声優を担当した野村道子さん(84)。貴家さんとは、60年以上ともに仕事をしてきた声優仲間でもあった。

 

野村さんがワカメちゃんの2代目声優として“磯野家”に加わったのは1976年のこと。1979年からは『ドラえもん』(テレビ朝日系)でしずかちゃん役も担当することに。貴家さんの地声は、タラちゃんそのままだったという。

 

「だから、まだ息子が小学生だったころ、貴家ちゃんや、大山(のぶ代)さんからの電話に出ると、タラちゃんやドラえもんの声が聞こえるものだから、息子はびっくりして固まってしまうんですね」

 

双方の現場はまったく違う雰囲気だったという。

 

「『ドラえもん』はメインが5人とコンパクトで、わりとみんな仲よし。女性陣だけで、何度も海外旅行に行ったりしました。一方で『サザエさん』は、職人の集まりという感じで、収録現場で集まり、収録が終われば、パッと散っていくんですね」

 

一番の思い出は、『サザエさん』の女性メンバーだけの旅行だ。

 

「最初で最後の旅行でした。フネさん役の麻生(美代子)さんが『親戚が島根県で旅館をやっているから、みんなで行こう』と誘ってくれて。出雲大社に行って、大根島の牡丹園で、みんなで牡丹の花を買ったりしたんです」

 

そんな仲間たちが、一人、また一人と亡くなっていく。

 

「2014年に亡くなった波平役の永井(一郎)さんとは『私の弔辞は、永井さんが読んでね』と約束していたのに……。

 

2018年に亡くなった麻生さんは私にとってはひとまわり上のお姉さんで、目標になる存在。お酒もたばこもすごくて。晩年、シニア向けのマンションに住むことを勧めたとき、『そんなとこに入ったら、(お酒を飲んで)深夜1時、2時に帰るわけにもいかないでしょう』と笑っていました。

 

2020年に亡くなったマスオさん役の増岡(弘)さんはお味噌が好きで、声優仲間で自家製のお味噌の造り方を教える会を結成しました。犬をもらったことがあるんですが、自家製の味噌を使った食事を与えていたようで、舌が肥えているものだから、ドッグフードを食べてくれなくて困りました(笑)」

 

多くの名優たちが培った国民的アニメ『サザエさん』はこれからも続いていく。

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