上皇さまと美智子さまは、2月20日に東京都内の「平和祈念展示資料館」をおしのびで訪問された。この資料館では、第二次世界大戦を戦った旧日本軍兵士の軍服や召集令状のほか、戦後旧ソ連によってシベリアやモンゴルなどに抑留されて強制労働に従事させられた人々についての資料を展示している。
「現在は抑留された兵士が日本の家族とやり取りしたはがきを展示した企画展が開催されており、上皇ご夫妻は1時間ほどじっくりとご覧になっておりました。在位中は戦争の歴史と常に向き合われたご夫妻は、“慰霊の旅”として国内外問わず各地を直接ご訪問し、御霊へ祈りを捧げられてこられました」(宮内庁関係者)
シベリア抑留では、旧ソ連が強制的に連行していった日本人は約57万5千人とされ、乏しい食料と厳しい寒さ、劣悪な生活環境によって6万人近くが命を落とした。
「令和となってもなお、天皇皇后両陛下によるロシアへのご訪問は実現しておりません。さらに、昨年2月24日にロシアがウクライナに対する侵攻を始めたことで、ますますご訪問の実現が難しい状況になっています。今回の企画展などのご覧には、上皇さまと美智子さまが、かの地で倒れた人々への祈りのお気持ちが込められているように感じました。
上皇ご夫妻による“慰霊の旅”は、平成の代で決着させたい思いで続けてこられました。しかし、政治的な事情によって足を運べなかった場所は決して少なくなく、天皇ご一家や秋篠宮ご一家をはじめ、次世代の皇族方にそうした悲願を上皇ご夫妻は託されておられるところがあると思います」(皇室担当記者)
2007年7月、皇太子でいらした天皇陛下はモンゴルを訪問されている。かつて旧ソ連の強い影響下にあったため、終戦時に抑留された兵士のうち、約1万4千人がモンゴルに送られて強制労働に従事させられ、そのうち2千人が亡くなっている。
「陛下は、首都ウランバートルの郊外にある日本人抑留者の慰霊碑を訪ねて供花され、抑留経験のある在留邦人の話をお聞きになっています。こうしたご経験があるからこそ、戦後生まれの陛下も、戦争の悲惨さや平和の尊さを絶えず発信されてこられたのでしょう。また、モンゴル訪問時には、ご病気のために雅子さまが同行できなかったことを残念がられておりました。
雅子さまは1歳8カ月のころから3年ほど、外務官僚だったお父様の小和田恆さんが在ソ連日本国大使館一等書記官に着任したため、首都モスクワで生活されています。幼少期の思い出がある国ゆえに、昨今の情勢には強くお心を痛められていらっしゃることでしょう。
上皇ご夫妻も、日々ニュースに接する中で現地の様子を注視されているそうです。陛下と雅子さまによる“シベリアご訪問”の難しさをお感じになられていると思いますが、“大戦の記憶を持つ人々が残っている令和のうちに実現してほしい”という願いを抱かれておられるはずです」(前出・宮内庁関係者)
天皇陛下はお誕生日に際しての記者会見で、各地で戦争や紛争が続く世界の現状に「深い悲しみ」を覚えると話され、「私たち一人一人が平和な世界を実現するために何ができるのか、改めて問われているのではないかと感じます」と語られている。平和な世界の実現のために、両陛下の歩みが始まったーー。