住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、読みふけったマンガの話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’90年代”を振り返ってみましょうーー。
「現在公開中の映画『THE FIRST SLAM DUNK』は、男性ばかりか女性にも大人気で『見るたびに、泣けるポイントが違うんですよ』『もう、何回も見に行っちゃいました』など絶賛する声が聞こえてきます。映画公開前に内容が一切明かされず、期待が高まりましたが、それを上回る仕上がりになったようです」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(55)。
『SLAM DUNK』(’90~’96年・集英社)の原作は『週刊少年ジャンプ』で連載されていたため、女性の場合、大黒摩季の『あなただけ見つめてる』が初代エンディング曲だったアニメ版で初めてファンになったという人も多いだろう。
物語は、赤い髪をした主人公の桜木花道が、バスケ部主将の妹・晴子にひと目ぼれしたことでバスケットボールを始め、同級生でクールな流川楓、バスケ部を潰そうとして騒ぎを起こした元不良の三井寿などの仲間とともに、一つのチームとして強豪校に挑んでいくというものだ。
「少年マンガらしいヤンキー、スポ根、バトルという要素ばかりではなく、ラブコメの側面もあったので女性も入りやすい作品でした。何より、キャラクターごとに人生ドラマがあり、感情移入できるような描かれ方をしていました。今の表現で言えば“推し”を見つけて応援するという楽しみ方も。キャラが立っていたからこそ、公開中の映画で主人公が変更されていても、違和感が少なかったのでしょう」
■“聖地巡礼”でインバウンド需要にも貢献
原作マンガは’94年、最高部数653万部を記録した『少年ジャンプ』の巻頭カラーページを飾った。
「少年のスポーツといえば、野球かサッカーがメジャーだった時代、同作によってバスケ人気に火がつき、’95~’96年には競技人口が100万人を超えたといわれています。日本人初のNBA選手となった田臥勇太さんも、同作の影響を受けたと取材のインタビューで答えています」
熱烈なファンは、物語の舞台となった湘南・鎌倉を“聖地巡礼”するという。
「コロナ禍以前は、韓国や台湾から観光に来る人が多く、現地には英語や韓国語の注意看板もあるほど。インバウンド需要にも貢献しています。私は大学院で授業を持っていますが、『スラムダンクファンだから留学先に日本を選んだ』という学生も複数います。連載が終わって27年たっていますが、その人気は日本にとどまらず、世界に広がっています」
【PROFILE】
牛窪恵
’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍