第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、見事優勝を果たした侍ジャパン。14年ぶりの王座奪還に導いた栗山英樹監督(61)に、称賛の声が上がっている。
今大会で特に目立っていたのが、いわゆるゆとり世代・Z世代と呼ばれる20代の活躍だ。佐々木朗希(21)は160キロ超えの投球を連発し、ラーズ・ヌートバー(25)はムードメーカーとしてチームを盛り上げた。栗山監督の愛弟子でもある大谷翔平(28)は二刀流の活躍を見せ、アメリカとの決勝戦ではスター選手のマイク・トラウト(31)から三振を奪って試合を締めくくった。
不振が続いていた村上宗隆(23)も、準決勝のメキシコ戦でサヨナラタイムリーヒットを決めると、続く決勝戦でもソロホームランを放ち覚醒。「バントも頭をよぎったんですけど、監督が『ムネにまかせた』と言ってくれて、腹をくくっていきました」と振り返っている。
若手選手の活躍といえば、記憶に新しいのがサッカー・カタールW杯の森保ジャパン。20代前半の堂安律(24)や三苫薫(25)が活躍し、強豪のドイツ、スペインを撃破した。森保一監督(54)の采配が脚光を浴びた。
ゆとり世代、Z世代に最大限力を発揮させる“令和の名監督”のマネジメントには、どんな共通点があるのだろうか。『部下 後輩 年下との話し方』の著者であり、栗山監督と対談経験もある心理カウンセラー・五百田達成氏はこう語る。
「2人とも、『上司と部下』『監督と選手』というよりも、対等なパートナーシップを築こうとする雰囲気がありました。若い、とくにZ世代は『上から目線』に敏感で、高圧的な態度には『古いな』と感じやすい。組織への帰属意識も上の世代と比べると希薄で、個人主義です。
一方的に『経験を積め』『先輩から学べ』というのではなく、『あなたたちはパートナーである』という姿勢が、彼らに響く令和の接し方です」
両氏とも、高圧的に上から指示を与えるのでなく、選手からの意見を尊重し、主体性を引き出してきた。大谷の二刀流も、その象徴だ。
「森保監督は、別々の便で帰る選手を、夜中でもひとりひとり見送りに行っていたといいます。このエピソードからも、選手と対等に付き合う姿勢がうかがえます。
栗山監督は、現役時代から『監督と選手の上下関係』に疑問を持っていたと語っていました。完全な『上下関係』だと選手は言いたいことを言えず、ミスを恐れて萎縮してしまうと。年齢に関係なく本音を言える関係づくりを意識する、クレバーなビジネスマンのような監督、という印象でした」(五百田氏、以下同)
両監督とも、選手を下の名前やあだ名で呼ぶことも共通点だ。栗山監督は大谷翔平を「翔平」、村上宗隆を「ムネ」と呼び、森保監督も三苫薫や堂安律を「薫」「律」と呼んでいる。
「二人とも選手との距離感が絶妙です。特に栗山監督は、現役時代名字で呼び捨てにされるよりも『栗』と愛称で呼んでくれたコーチに対し『恩返ししたい』と思えた経験から、選手を下の名前や愛称で呼ぶよう心掛けているそうです。
上から目線にしないよう気を付けるあまり、下からへりくだりすぎる人がいますが、距離ができすぎてしまうのも好ましくありません。フラットでフェアでプレーンな姿勢が、年下との関係づくりでは大切です」
残念ながら、今大会を最後に退任の意向を示している栗山監督。次の監督にも、令和流のリーダーシップを期待したい。