’22年10月、岸田政権がリスキリング(学び直し)支援に5年間で1兆円を投入することを表明。興味はあるものの、ハードルの高さも感じている人のために、リカレント教育を経験した先輩たちの経験談をお届けします。
「うちの母親が50歳過ぎて非常勤の教師として復職する姿を見て、人生、何歳からでもチャレンジできるんだ、学び直せるんだと思ったんです。だって復職といっても、50過ぎて体育ですよ(笑)」
そう語るのは、元バレーボール女子日本代表の荒木絵里香さん(38)。
「高校卒業時も大学進学を考えましたが、選手としてさらに上に挑戦したいという気持ちも強く、両親からも『大学はいつでも行けるよ』とアドバイスもあって、高卒でVリーグへと進んだんです」
常に第一線で活躍しながら、私生活でも娘(9)を得て、日本を代表するママ・アスリートの一人となっていた荒木さん。ロンドン五輪では主将としてメダリストとなるなど選手として完全燃焼し、’21年9月に引退したあと、
「20年ぶりの学生生活です」
自身のインスタグラムで早稲田大学大学院スポーツ科学研究科入学を報告したのが、昨年4月。
「父やチームの前監督も早稲田出身だったので、ここを選びました。
私は高校卒業なので、まず大学院受験資格を得るためにレポートや面接を受けての入学でした。
院でのテーマは『ブロックの研究』。とにかく、パソコンもろくにさわったことがなかったので、論文1本書くのも、まさに必死」
通ったのは、西東京市の東伏見キャンパス。
「自宅のある千葉から往復4時間かけての通学。ときには『娘をお願い』と、また母に頼ったり。
リビングで大学院1年生の私が論文に苦労してると、小3の娘に『ぜんぜんピカピカじゃない1年生だね』と言われたりも(笑)」
発見の連続の1年間だった。
「実際に選手、社会人として経験を積んだあとなので、あっ、あれはこういうことだったんだなと、“人生の答え合わせ”をしている感覚になったことも。
同時に、まだ知らない世界がこんなにあるんだと、学び直しの1年間は、私の人生の第2ステージの出発点だと思いました」
今年3月、無事に大学院の課程を修了し、修士の資格を得た。
「今後は、院で学んだことを現場に生かすと共に、MAN(ママ・アスリート・ネットワーク)やJOC(日本オリンピック委員会)の活動でも発信していきたい」
現役時代には封印していた両手の指のマニキュアがまぶしい。
「レポート書きでパソコンのキーボードを打つとき、この指が目に入るとテンションが上がるんですね! これも、バレー選手のころには知らなかった発見でした」
【PROFILE】
あらきえりか
’84年8月3日、岡山県生まれ。19歳で日本代表に。現在はトヨタ車体女子バレーボール部チームコーディネーター