波紋を広げている映画『バービー』のアメリカのX(旧Twitter)公式アカウントによる問題。しかし、その裏で真逆の真摯さを見せたアメリカ出身の“あるプロ野球選手”に注目が集まっている。
アメリカで7月21日に公開された映画『バービー』。アメリカ発祥の着せ替え人形である「バービー人形」を実写化した本作は、現代の社会問題を表現したストーリー、豪華絢爛なファッションや舞台装置などが話題を呼び、公開前から大きな注目が集まっていた。
また同日には、原子爆弾開発を主導し「原爆の父」と呼ばれた実在の人物・ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた伝記スリラー映画『オッペンハイマー』も公開された。どちらも豪華俳優を起用した話題作でありながら、真逆なトーンであることが話題を呼び“バーベンハイマー”という造語が生まれネットミーム化。2作品どちらも鑑賞する人が続出し、ネットではこの2作品をかけあわせたファンアートも数多く投稿されていた。
しかし、ファンアートの中には原爆投下を想起させるキノコ雲と『バービー』の登場人物をコラージュさせるようなものも。さらに、そうした原爆投下を“ネタ”にするような投稿に対して、アメリカの『バービー』公式Xが好意的な反応を見せたことで、日本では激怒する人が続出。
公開中止を求めるハッシュタグも生まれ、7月31日にはワーナー・ブラザーズジャパンが運営する公式Xが謝罪する事態にまで発展。そして8月1日(現地時間31日)には、当事者であるアメリカのワーナー・ブラザーズが各メディアに対して、《ワーナー・ブラザースは先の配慮に欠けたソーシャルメディアへの投稿を遺憾に思っております。深くお詫び申し上げます》と公式声明を発表した。
痛ましい出来事である原爆投下を“ネタ”にするという配慮を欠いたアメリカの『バービー』公式とそのファンたち。いっぽうで、戦争の歴史に真摯に向き合った日本で活躍するアメリカ出身のプロ野球選手が。今シーズンにメジャーからDeNAに移籍してきたトレバー・バウアー投手(32)だ。
バウアーは、7月30日に公式YouTubeチャンネルに「この試合は投げるべきではなかった」というタイトルの動画を投稿。その中で、家族とともに広島を訪れていたバウワー投手は、職人のグローブ作りを見学したあと、広島市にある原爆ドームにも訪れた。
「第2次世界大戦の事は知っている。でもそれはアメリカ人の視点だから、日本人の視点について知りたい」と語り原爆ドームを訪れたバウアーは、石碑の説明を真剣な眼差しで読む。続けて、「ある日、目が覚めたら世界が変わっているなんて….」「耐震補強や保存のために募金を募り、改修資金を集めている。歴史の教訓を活かし、核兵器の怖さを未来の世代に伝えている」と感想をコメント。
そして「建物を残すべきか取り壊すべきか。老朽化しているから危険だ、嫌な記憶が蘇るから壊そうという人もいる。僕は残してくれておいてよかったと思う、原爆の惨状をよく伝えているから。その破壊力を目の当たりにし、理解できることがある。想像力は視力を通してより鮮明になる。悲しい記憶だが、このような場を設けてくれた事に感謝している」と結んでいた。
原爆投下の被害を訴える原爆ドームを自ら訪れ、真摯に向き合ったバウアー。『バービー』の米公式と真逆な彼の行動を称賛する声が相次いだ。
《バービーの炎上の件見てたけど 日本から見たWW2の歴史が知りたいって原爆資料館に行ったバウアーってすげぇよな》
《原爆をネタにして茶化すバービー公式 原爆ドームに訪れるバウアー 対照的ですな》
《朝バウアーの記事見て、夜バービーの炎上。いろいろなアメリカ人がいるわけだが、まあなんつーか、バービーのほうの人が多いんだろうし(というかそういう国なんだろうし)、だからこそバウアーは原爆ドーム見に行って学ばねばならないと思ったんだろうなあ》