年金の未来予想は暗い(写真:Luce/PIXTA) 画像を見る

「7月3日、厚生労働省が5年に1度の“年金財政の定期健診”ともいわれる財政検証を公表しました。今回の結果では、前回よりも年金財政が改善されたことがうかがえます。しかし、今後も年金の給付水準はジリジリと引き下げられる傾向であることに変わりなく、けっして年金生活者が楽になるということではありません」

 

こう語るのは、経済評論家の加谷珪一さんだ。年金の未来を占う財政検証は、被保険者の年齢構成や賃金水準、経済成長の予測などさまざまな統計データをもとに算出される。

 

とくに着目すべき数値が、モデル世帯の所得代替率だ。所得代替率とは、現役世代の男性の平均的な賃金に対して、厚生年金を受給している夫婦2人のモデル世帯の年金受給額が何パーセントあるかで示される。

 

2024年財政検証では、平均賃金は月37万円で、モデル世帯の年金額は22万6000円とされ、所得代替率は61.2%となった。この値が50%を下回らないように調整することが定められている。

 

今回の財政検証では現役男子平均手取り収入額37万円に対して、モデル世帯の年金額は22万6000円で所得代替率は61.2%。前回(2019年)の財政検証の61.7%と比べ、0.5ポイント下がった。今後も少子高齢化の影響で、所得代替率は下がっていくという。“年金博士”こと、社会保険労務士の北村庄吾さんが解説する。

 

「2004年に厚労省によって導入されたマクロ経済スライドという制度によって、賃金や物価が上がっても年金受給額は上がりにくくなりました。その効果で、所得代替率は下がっていくのです。今後も、政府は法律で定められた“所得代替率50%”を下回らない範囲で、年金の給付を抑制していく方針です」

 

年金は物価や賃金の変動に応じて、受給額も変動する。しかし、2004年に導入された「マクロ経済スライド」によって、年金受給額の上昇は抑制されることになった。抑制される割合はスライド調整率などと呼ばれ、公的年金全体の被保険者の減少率(直近3年の平均)と、平均余命の伸びを勘案した一定率(-0.3%)に、前年度までの繰り越し分を合わせた値。2024年度は-0.4%だった。

 

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