蒸し暑い空気が漂うなかでも、流水の文様があしらわれた淡い緑色の着物に身を包み、皇居・宮殿の玄関で、笑顔の雅子さまは賓客を見送られていた。7月17日、日本で開かれていた国際会議「第10回太平洋・島サミット」に参加した太平洋各国・地域の首脳夫妻を宮殿に招き、宮中茶会を開かれていた天皇陛下と雅子さま。皇室担当記者は、
「茶会は立食形式で、ミクロネシアやフィジー、トンガなど14の国と地域から来日した23人の首脳夫妻と、両陛下は飲み物や軽食を囲みながら和やかに懇談されていました。お見送りにいたるまで心を尽くされる雅子さまのおもてなしに、招かれた各国首脳夫妻も感激して皇居を後にしていました」
英国ご訪問という大任を成し遂げ、雅子さまは着々と、令和の国際親善を加速させようとされている。その陰で、雅子さまが皇室に入られてからほとんどの年月をともにされてきた、“恩人”との別れがあったのだ。
「7月12日付で、女官の岡山いちさんが退職したのです。岡山さんは両陛下のご成婚の翌年にあたる1994年1月に東宮女官に着任し、天皇陛下のご即位後も女官として仕えてきました。2011年1月からは、4年にわたり東宮女官長代理も務めています。何度か東宮女官長の交代がありましたが、岡山さんがいるからこそ、天皇ご一家を支える体制に大きな混乱が生じなかったといえます」(前出・皇室担当記者)
女官の存在が皇室の方々にとってどれほど重要なのか、元宮内庁職員で皇室解説者の山下晋司さんに聞いた。
「侍従職の女官や東宮女官は、国家公務員試験の合格者でも他省庁からの出向者でもありません。侍従と同じく、公私にわたってお世話をしますが、女官はよりプライベートな領域に関わります。プライベートに深く関わることから信頼関係が重視される職種であり、人脈を駆使して適任者を探し、採用しているようです」
侍従や女官は清掃や洗濯などに携わる職員らを束ね、皇室の方々に随行して国内外の出張や泊まり勤務もする重要な役職だ。岡山さんを古くから知る宮内庁関係者は、次のように語る。
「30年来両陛下にお仕えしているだけあって、行事での所作に精通し、祭祀などで装束を着付ける“お服上げ”にも詳しく、両陛下や職員からも信頼を得ていました。近年は大ベテランとして、ほかの女官を指導・助言する役目を担っていました。
ふっくらとした容貌や体格から“肝っ玉母さん”という雰囲気があります。いっぽうで、温和な語り口や優しい雰囲気がまったく崩れない方です。メディアを警戒して淡々と接する女官も少なくありませんが、岡山さんは分け隔てなく記者の問いかけにも応じ、非常に温厚な人柄で知られてきました。
こうした仕事ぶりや人柄もあって、幼い愛子さまにとっても安心感を与えてくれる存在だったと聞いています」