1人2役を演じる神木隆之介や、得体の知れない女性になりきる趣里など演技力が光る、実力派ぞろいの秋ドラマ。本誌ドラマウオッチャーたちが、女性にオススメの作品を徹底討論します!
30代編集N(以下、N):毎年、豊作だといわれる秋ドラマ。本誌がWebで行った「初回が面白かったドラマ」のアンケート調査では、1位が日曜劇場の『海に眠るダイヤモンド』、2位が『民王R』、3位が『モンスター』という結果でした。まず、この3作はいかがですか?
30代記者S(以下、S):『海に眠るダイヤモンド』は、日曜劇場のなかでもいちばん好きかもしれないです。神木隆之介が演じる主人公の鉄平が同年代で、若者たちが恋に、人生に思い悩む姿を描く群像劇なので気持ちを入れて見られますね。人間ドラマ好きには◎。
50代記者H(以下、H):圧巻なのは、’50年代の長崎県の端島(軍艦島)を再現しているところです。当時の島民の暮らしぶりもすごく生活感があってリアルだし、炭鉱員の仕事のシーンも臨場感があって引き込まれました。スケール感があって映画みたい。
N:また、現代パートにも注目しています。鉄平と同じ顔をしたホストの玲央は、鉄平の孫なのか、宮本信子が演じる謎の女性はいったい誰なのか。過去の恋模様もいろいろ変化してきて、気になるところです。
S:神木隆之介の、気力のないホストもハマっていて、こういう役もうまいんだなあって感心しました。
H:打って変わって『民王R』は、ただただおかしい。入れ替わる対象が全国民って、すごいチャレンジですよ。総理大臣役の遠藤憲一が、あのちゃん演じる秘書や5歳児と入れ替わったときの演技がもう最高!
S:あと、お笑いの要素だけでなく、現実の政治が問題ずくめで笑えないところをきちんと風刺しているところがいいと思います。いちばん刺さったのは、溝端淳平が演じる“永田町のプリンス”。あれって、あの人だよね!? って(笑)。
N:闇バイトを取り上げたり、アメリカの大統領から武器を買えって迫られたり。日本が抱えている問題をエンタメで見せてくれている感じがいいですね。
H:『モンスター』は、型破りな弁護士を演じる趣里の演技が好きです。朝ドラのイメージが強いけれど、こういう得体の知れない女性がとても似合う。
S:扱う事件が自殺教唆、著作権問題、精子提供、と独特ですよね。事件の裏を探るために趣里がアイドルに扮したりするのも面白いし、事件の解決方法には、普通の弁護士ドラマにない新鮮さがあります。
N:私は、柳楽優弥と坂東龍汰が兄弟を演じている『ライオンの隠れ家』が好きですね。自閉スペクトラム症の弟を演じる坂東龍汰は、1カ月間まったく仕事を入れずに準備をしたそうで、役をものにしていますね。
H:それに、柳楽優弥の穏やかな雰囲気もいいですよ。ライオンを演じる子役の佐藤大空くんも演技が上手。
S:3人の、あの空間をずっと見ていたいけれど、謎の男が現れたり、死んだと思っていた母親が生きていたり? サスペンス要素とどう絡み合っていくのか、この先の展開がドキドキです!
H:『嘘解きレトリック』は、月9っぽくないところが逆に新鮮でいいですね。主演の鈴鹿央士と松本穂香がレトロモダンな世界観にとても似合っているし。
N:2人ともかわいらしいですよね。貧乏探偵とウソを聞き分ける能力を持つ助手という異色のバディものですが、見ていて温かい気持ちになれる物語です。
H:バディといえば、中井貴一と岡田将生の『ザ・トラベルナース』も帰ってきました。関係が深まった2人の掛け合いも軽妙だし、ナース役の安達祐実や野呂佳代などの演技もナチュラルでいいよね。
S:どんどんシリーズ化しそうな気がします。
N:テンポがいいし、週の後半でも軽快に見られる感じが、木曜9時という時間帯にピッタリですね。また、『オクラ~迷宮入り事件捜査~』の反町隆史と杉野遥亮は、昭和の人情派刑事と令和の合理的な刑事、と凸凹コンビを演じています。迷宮入りの事件を再捜査する話かと思いきや、意外な展開で驚きました。
H:本当、再捜査するために、証拠を捏造しちゃう!? って感じ。しかも、反町隆史だけでなく、元妻で科捜研職員役の観月ありさまで協力しているなんて(笑)。
S:ビジュアルのいい2人だから、ブロマンス的なものを期待していたんですよ。そろそろ打ち解けてきたと思うので、もっと絡んでほしいなあ(笑)。
N:捜査つながりでいくと、『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』は、元警察官の兄と天才ホワイトハッカーの妹が、特殊詐欺グループに潜入する話で、バレたら、ジ・エンドという展開が見応えありますね。
S:制作陣が『大病院占拠』『新空港占拠』シリーズのスタッフなので、制限時間が迫る緊張感とか、どんでん返し感の面白さは共通していますよね。
H:今期は注目のイケメンはいますか?
S:私は、『あのクズを殴ってやりたいんだ』の玉森裕太がイチ押しです。かなり本格的にボクシングの練習をしたようで、見た目にもずいぶん絞りましたよね。やっぱりかっこいいなあ、奇麗だなって眼福です。
H:主人公の奈緒は、結婚式当日に彼氏に逃げられたのに、玉森裕太に出会ってすぐ、「運命の人だ!」と思っちゃうところがダメだよね。だからだまされるの!
N:松本若菜主演の『わたしの宝物』は、田中圭が夫役で、Snow Manの深澤辰哉が幼なじみ役。ドロドロ系の重ため恋愛ドラマです。
H:最初は田中圭がモラハラ夫だったから、松本若菜が演じる妻のほうに肩入れして見ていたんですよ。でも、夫が急にいい人になっちゃったから、今度は夫がかわいそうに思えてくるよね。
S:世の中の夫婦も、子供がいないときは冷め切っていても、子供ができた途端に変わることもあるのかなって。意外にリアルなんじゃない? と思いました。
H:展開がものすごく早いから、もう深澤辰哉と再会しちゃって。夫に、自分の子じゃないって、いつバレちゃうんだろうってハラハラドキドキだよね。
N:最後は、菜々緒主演の『無能の鷹』ですね。お仕事ドラマって、熱血バリバリ系、もしくは『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)のように割り切り系主人公が多くて。どちらも極端で共感しづらかったけれど、『無能の鷹』は、ゆるい空気感が見ていて心地いい。
S:菜々緒は、バリキャリっぽい見た目とポンコツな中身とのギャップが面白くて、めっちゃ好きです。仕事できなさすぎるけど、なんだか憎めない(笑)。
N:ポンコツだけど卑屈にならない鷹野を見ていると、小さいことでクヨクヨ悩まなくてもいいか! と思えるんですよね。
H:脚本が根本ノンジで、NHKの朝ドラ『おむすび』の方なんですよ。鳥の名前と登場人物のキャラが合っているのがすごいなあって。鶸田役の塩野瑛久は、ビジュアルはキレキレなのに、気弱なキャラクターが意外にハマってて。
S:本当、登場人物の一人ひとりに共感できるところがあって、善人もいないけれど、根っからの悪人もいない、みたいなリアルさがすごく好きです。
■本誌記者のBEST3
【50代記者H】
1位『海に眠るダイヤモンド』
2位『ライオンの隠れ家』
3位『わたしの宝物』
【30代記者S】
1位『海に眠るダイヤモンド』
2位『無能の鷹』
3位『民王R』
【30代編集N】
1位『海に眠るダイヤモンド』
2位『モンスター』
3位『ザ・トラベルナース』