(撮影:樽木優美子) 画像を見る

映画『おーい、応為』で天才浮世絵師・葛飾北斎を演じた永瀬正敏。その門弟・渓斎英泉(善次郎)は髙橋海人が務めている。今回が初共演となる2人だが、お互いどんな印象を持っているのか。

 

永瀬:髙橋さんは、テレビで拝見していたとおりの方でした。ついときでも、それを見せずに笑顔でいられる強さがあるのだと思います。撮影中は、僕と応為役の長澤(まさみ)さんが、1対1で格闘技のような芝居をしているところに、ふわりと新しい風を運んでくれて。役柄としても髙橋さんご本人としても、現場をほっとする空気に変えてくれる、とてもありがたい存在でした。

 

髙橋:永瀬さんとは、クランクイン前の浮世絵の特訓でめてお会いしました。僕がかなり緊張していたので、気さくに話しかけてくださって本当にありがたかったです。永瀬さんが優しく迎えてくださったおかげで、初日から、お互いに描いた絵を見せ合ったりもできたし、撮影中もずっと楽しく過ごすことができました。

 

そんな髙橋は、本作が念願の時代劇初挑戦。ドラマの演技を見たプロデューサーからの大抜擢だったという。

 

髙橋:頑張った証しは、誰かがちゃんと見ていてくれるんだなと、感慨深い気持ちでした。長澤さんと永瀬さんとの共演にはプレッシャーもありましたが、自分のこれまでの経験を信じて、善次郎を演じきれたと思います。僕には、浮世絵の技法を学べたことも刺激的で、細かい線や幾何学模様を描く筆遣いの繊細さに圧倒されました。

 

また、永瀬にとっても、北斎を演じることには「やりがいしかなかった」という。劇中では、全身全霊で絵にのめり込むさまを見事に表現している。

 

永瀬:長澤さんも髙橋さんも、筆遣いがすごくお上手なんですよ。だから「このままではマズい」と何度も練習を繰り返しました。撮影中、道端に寝転んで絵を描く場面があったんですが、そのとき描いた亀が自分史上最高の出来でした。浮世絵の先生方もほめてくださったんですが、完成版ではまるまるカットされています(笑)。ただ、北斎と応為の父娘関係を描くうえで、必要なシーンではないと判断された大森(立嗣)監督のセンスはさすがだと思いました。

 

最後に、2人の共通点であるアート活動についても話を聞いた。永瀬は写真、髙橋はイラストと、創作意欲が湧くのはどんな瞬間なのか。

 

髙橋:魅力的な色に出合ったときですね。「北斎ブルー」にも魅了されていて、実はもうすでに自分で絵を描き始めているところです。

 

続いて永瀬に問いかけると、おもむろに鞄からカメラを取り出し、髙橋に向けてシャッターを切った。

 

永瀬:まさに今、髙橋さんを撮りたいと思いました。実は現場でも、そういう瞬間は何度もあったんですが、江戸時代の空気のなかにカメラを取り出すわけにもいかなくて。写真館をやっていた祖父の強い思いが伝わる資料を見つけてから、人物を撮りたいという欲望がむくむくと膨らんでいるんです。

 

髙橋:今、すごくうれしい気持ちになりました。永瀬さんに撮っていただけるなんて本当に光栄です。

 

【INFORMATION】

映画『おーい、応為』(10月17日公開)

夫と離縁したお栄(長澤まさみ)は、父の葛飾北斎(永瀬正敏)の元へ出戻ると、徐々に浮世絵の才能を発揮し、応為という画号を授かる。愛犬のさくらやよき理解者である善次郎(髙橋海人)の存在に支えられながら、父娘にして師弟という唯一の関係を紡いでいく。

 

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