話題の映画『8番出口』でおじさん役を演じた河内大和(写真:本誌写真部) 画像を見る

「監督から『“おじさん”は映画のアイコンになるから、覚悟して』と言われていて。少しワクワクはしていたものの、まさかここまで反響があるとは思わなかったです」

 

こう驚きを語るのは、俳優の河内大和さん(46)。公開から約1カ月で興行収入45億円を突破した大ヒット映画『8番出口』で「歩く男」、通称“おじさん”役を演じている。この「歩く男」は、原作を象徴するキャラでありながら、芝居の内容は「繰り返し、規則正しく地下道を歩く」だけ!

 

「あの歩き方は、自分の体をどうプログラミングするかを、考えて。まるでたい焼き型のように、通路に無数のおじさん型があって、それに自分をはめていくイメージで演じました」(河内さん、以下同)

 

そもそも『8番出口』は、ゲームクリエーターKOTAKE CREATE氏が制作したゲームが原作。地下通路を舞台に、プレーヤーは“異変”を探しながら8番出口を目指すというストーリー。独特のスリルと緊張感で世界的大ヒットとなったこのゲームを、二宮和也主演で実写化したのが映画『8番出口』(配給:東宝)だ。

 

おじさんの演技は極限まで考え抜いたものだったといい、「CGかと思った」「本当にゲームの“おじさん”」と、称賛の声は後を絶たない。このおじさん、いったい何者なのか――。

 

河内さんは1978年、山口県岩国市生まれ。幼いころの記憶には、測量士として実直に生きる父の背中があった。

 

「ずっと書斎にこもって資格取得の勉強をしていた父の姿が目に浮かびます。これが原風景なのか、僕もつねに『学ばないと』という刷り込みがあるようです」

 

役者としてのスタート地点は、新潟大学の演劇研究部。

 

「雪国への憧れで選んだ新潟で、シェイクスピアに魅了されました。山口は雪が降らないんで、雪が積もりすぎて、家の2階から出入りする……みたいなことに憧れていて(笑)。大学卒業後も14年新潟で演劇に没頭して、演劇人たちとつながって。2011年に上京しました」

 

その後2013年にシェイクスピア劇団「G.GARAGE///」を旗揚げし、今に至るまで出演だけでなく、脚本・演出も手がける。2021年、野田秀樹氏の舞台公演『THE BEE』に抜擢されたことが転機となり、日曜劇場『VIVANT』(’23年、TBS系)でドラマ初出演を果たす。

 

これまでの芝居は舞台が中心だったが、ドラマ・映画への出演で全国的な露出が増えた。いちばんうれしいのは「家族が喜んでくれていること」と破顔する河内さん。

 

「地元の両親からも『観たよ』ってメールが来てうれしかった。なんといってもいちばん喜んでくれているのは妻! 妻がいなければ、ここまで来られませんでしたから」

 

同じ劇団員でもある妻の真以美さんからは、お芝居のアドバイスも頻繁にもらっているそう。「家庭内の主導権はもちろん妻。妻の言うことは、いつもいい方向に運んでくれるんで(笑)」と、話す。

 

プライベートでは、6歳の息子と昆虫採取や釣りに行くことも。

 

「息子と過ごせる総時間って、想像以上に短いものでしょう。子どもが生まれてからは、芝居のアプローチさえも変わったし、子連れの人が気になったり、人に対して優しくなりましたね」

 

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