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「医療DXを掲げる政府は、 30年までにすべての医療機関で“電子カルテ”の導入を“目指す”としていました。しかし、政府が提出した医療法改正案の中に、政府に対して『2030年末までにすべての医療機関において電子カルテの普及を100%としなければならない』と、“義務づける”よう明記しています。義務化されたら、デジタル化についていけない地方の医療機関が軒並み閉院しかねません」

 

そう危機感を募らせるのは、全国保険医団体連合会(以下保団連)事務局次長の本並省吾さん。

 

医療DXとは、カルテの電子化やオンライン診療などの普及によって、医療をより便利にしようとする国のデジタル改革のこと。医療機関同士で情報を共有しやすくし、医療の質や効率化、患者の病気予防などにつなげるねらいがあるという。ところが “電子カルテ”の普及は、思いのほか進んでいない。

 

「厚生労働省が2023年度に調査した都道府県別のデータでは、電子化比率は全国平均で43.26%、電子化予定なしの比率は全国平均で40.81%。つまり、電子カルテの割合は半数にも及んでいません。とくに人口減少が進む地方で、その傾向が顕著です」(本並さん)

 

こうした傾向は、厚生労働省の調査から2年たった現在でも「変わっていない」と本並さん。

 

「日本医師会が今年4月から6月にかけて、全国の紙カルテ利用中の診療所を対象に行った調査では、“導入不可能”が54.2%と半数を超えています」

 

理由は、〈ITに不慣れで電子カルテを操作できない〉〈導入費用が高額〉〈電子カルテの操作を手伝える職員を確保できない〉〈導入しても数年しか電子カルテを使用する見込みがない〉などが上位に上がっている。

 

「地方では、医師の高齢化が顕著です。電子カルテを扱える人材を雇おうにも雇えない。電子カルテの義務化を機に閉院する診療所は増えるでしょう。『自分はもういつ辞めてもいいが、辞めたらこの地域の医療がなくなってしまう』と話す医師もいるんです」

 

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出典元:

WEB女性自身

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