世間との乖離を埋めていくために、テレビの人に求められてることとは――。 画像を見る

最も影響力のあるマスメディアとして永らく頂点に君臨したテレビ。しかし、今やその担い手である“テレビマン”の感覚が、世間と大きく乖離しているのではないかと話題になっている。

 

発端となったのは、あるベテラン放送作家が投稿した投稿プラットフォーム「note」に投稿した“テレビマンが転職市場で評価されない”ことを分析した記事。テレビ業界で働く人々は優秀だが専門性がないため転職市場で過小評価されているのではないかと問題提起した。

 

その上で、テレビ制作の現場で培われる「いくらでも頭を下げられる修羅場耐性」「企画力」「コミュ力」「人間観察力」などのテレビマンの優れた点を列挙。履歴書には書けない「人間力」や「総合的な力」といった”スキル”があるため、テレビマンは「どこへ行っても通用する」と主張した。

 

しかし、この内容が《絶妙にズレている》《単なる世間知らず》《テレビ業界の人って素で”テレビマン”って言葉使うのが気持ち悪い》などと、Xでは批判的に受け止める人が相次ぐことに。テレビ業界と世間との“ズレ”が露呈する皮肉な結果となった。

 

この「ズレ」の正体は何なのかーー。元テレビ朝日のプロデューサーで、近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)などがある、コンテンツプロデューサーの鎮目博道氏に解説してもらった。

 

「この著者をよく知っている」という鎮目氏は、「まず、ひとつ擁護したいのは、この方はテレビ業界をすごく愛してらっしゃるので、昨今のテレビ業界への風当たりの強さなどもあって、庇おうとされたのだと思います。ただ、それが”贔屓の引き倒し”で逆効果になってしまった」と前置きした上で、noteを読んだ率直な感想を次のように述べた。

 

「テレビマンを”上げた”つもりが、結果的に周りを下げてしまった感じが1番良くないと思いました。競争率の高い入社試験をくぐり抜けてテレビ局に入った彼らは、基本的なスペックとして、頑張れたり頭が良かったりなど、いろんな長所もあると思います。

 

しかし、挙げられているテレビマンの長所は、どの業界の社会人にも共通するスキルで、特段テレビマンに限ったことではありません。それを『テレビマンだから』と書いてしまったことで、逆に”世間が見えていない”ことが明らかになってしまったのだと思います」

 

また、鎮目氏は「本質的なテレビ業界の人間の問題」として「偉そう」など、圧倒的なイメージの悪さをあげる。

 

「テレビって客観的な判断基準が少ないんです。視聴率が良くても誰のおかげかわからず、悪くても誰の責任かもはっきりしない。だから、存在価値を自己顕示していかないと認められないみたいなことが多いので、自慢するようなトークが多く、なんかすごく感じ悪くなっちゃう人が多いんですよね。

 

業界内では、『老人ホームで1番嫌われるのはテレビマン』なんて笑い話があるほど、偉そうで、人の話は聞かないし、感じが悪いと言われます(笑)。また、テレビが力を持っていた時代を引きずっているため、取材依頼もお願いするんじゃなくて、どこか”出してやってる感”が出てしまったり、時間がないので頼み方も知らない社会人経験の浅いADに投げちゃって、複数人に同時に依頼しておいて自分達の都合でキャンセルしたり。短い時間で作らないといけないから、初めからストーリーを決めていて、自分たちの描いた絵に無理やり合わせるようとすることもあるから、”世論を操作しようとしてるんじゃないか”みたいに思われちゃったりもしますよね」

テレビが”古き良き時代”の幻想から抜け出せていないことも”世間とのズレ”を生じさせていると指摘する。

 

「著者の方は、2000年に大流行したある番組を作った人で、特にフジテレビなどでたくさんの人気番組を作った優秀な放送作家です。だからこそ、ある意味、今のフジテレビと重なるんです。

 

フジテレビって僕がテレビ業界に入った頃は圧倒的に強かったのですが、今のテレビ業界では1番”古き良きテレビ”っていう考え方から生まれ変われず、バブルの時代の感覚を引きずったままズルズルと下がり、今では業界最下位です。このnoteのズレ方が、まさに現在のフジテレビを象徴していると思います」

 

また、今回の炎上ではテレビ業界の人が自らを「テレビマン」と呼ぶことに違和感を感じるという声も多かった。

 

「『テレビマン』という呼び方は、今の若いテレビ業界の人も使いますが、男社会的で古いですよね。保母さんは保育士に、看護婦は看護師に呼び方が変わったのに、今でもみんなが『テレビマン』って言っているところが、まさにテレビ業界のズレを象徴していると思います。

 

また、『銀行マン』とか『商社マン』とかもですが、エリートっぽさを含む呼び方でもありますよね。”自分たちは面白いんだ”、”普通の人とは違うんだ”みたいな、ほぼ幻想なんですけど、そういうどこか自分を特別視したような自己肯定感を感じさせる点でも、違和感を抱かせるのだと思います」

 

ネットの普及でメディアの選択肢が爆発的に増えた結果、かつてのような力を失ったテレビ。世間との乖離を埋めていくために、テレビの人に求められてることとは――。

 

「ある意味テレビマンこそ今、これまでの成功体験を全部捨てて、ゼロから自分を作り直していかないと生き残っていけない職種の代表選手の1つだと思うんですけど、noteを見る限り、昔の感覚が色濃く残ってしまっていて、そこが残念ですよね。ああいうこと言っている限りは、”テレビに未来はないよな”って、テレビ業界の中にいても思います。

 

だから、世代交代して若手にもっと権限を任せるなど、いまだに引きずっている過去の成功体験をかなぐり捨てて、新しいことをやらないとテレビに次の成功は生まれないと思います。捨てるべきは捨てて、また面白い番組を作ってほしいです」

出典元:

WEB女性自身

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