鬼怒川の廃ホテルに突如出現した落書き(撮影:保坂駱駝) 画像を見る

栃木県日光市の鬼怒川温泉で、“ある光景”が注目を集めている。

 

現在は使われておらず、廃墟となったホテル。その最上階付近の壁面には大きな落書きが……。ベランダもないところに、いったい誰がどうやって描いたのか、“スパイダーマンの仕業か”と、SNSで話題になっているのだ。

 

調べてみると、その建物はかつて鬼怒川でグループ展開していた観光ホテルで、1980年に建てられたもの。しかし、バブル崩壊などの影響もあり、グループは経営危機に陥り、このホテルは2008年に閉鎖されている。地上8階、地下2階で客室は100近くもある大きな建物だが、閉館から18年が経過し、多くの窓ガラスが割れ、廃墟と化している。

 

この落書きは6月末ごろに投稿されたSNSで話題となったが、地元の人に聞いても「今年に入ってから気づいた」「1年前からありますよ」など、描かれた時期は判然としない。聞くと、この建物があるホテル街一帯が、ほとんど営業をしていない廃墟だらけとなっており、地元の人も足を踏み入れることが稀なのだという。

 

人通りが少ないエリアとはいえ、このような落書きは明らかな犯罪行為だ。アートやエンタテインメントに詳しい、シティライツ法律事務所の高橋治弁護士に話を聞いた。

 

「建物の所有者の許可を得ていないと思われますから、このような行為は建造物毀損罪にあたる可能性があります。5年以下の拘禁刑となる重い犯罪です。あるいは軽犯罪法第1条33号違反という可能性もあります。また、許可を得ずに建物に入っているので、住居侵入罪・建造物侵入罪に問われるでしょう」

 

このホテルは、廃墟マニアの間では有名な存在で、内部を撮影したブログや動画も少なくない。許可なく撮影していれば、犯罪に問われる可能性がある。ただその場合には、所有者が被害届を警察に提出する必要がある。

 

「この建物の現在の所有者が被害届を出せば、警察が捜査することになるでしょう。そして、誰がこの落書きをおこなったか特定できれば、捕まる可能性はあります。

 

規模の大小はあるにせよ、このような落書きはいたるところにあります。しかし、事件化される事例はかなり少ないように感じます。誰がやったのか特定するのが難しいのでしょう。誰の仕業なのかが特定できなければ、民事での損害賠償もしようがありませんから」(高橋弁護士)

 

じつはこの落書きは、別の角度からも注目されている。描かれているのが、日本や海外などでも活動しているアーティストが描くキャラクターに似ているのだ。SNS上では、このアーティストが描いたのではないか、という声もみられる。

 

「そのアーティストのInstagramでは、ブランドとコラボしたり、展覧会もおこなったりしています。つまり、サステナブルに活動されている方なので、このような非合法的な手段で作品を発表するということは考えづらいと思います」(高橋弁護士)

 

本誌は当該アーティストのSNSに、鬼怒川の落書きが作品かどうかを確認する連絡をしたが、返信はなかった。

 

このような落書きは「ストリートアート」とも呼ばれ、一部では芸術活動として擁護する声もある。

 

「芸術なのか落書きなのかーー日本での判例は、そういうことはまったく関係ありません。芸術的であるかなどはいっさい考慮されず、建物などをどの程度、汚したのかによって、何の罪なのか、罪の重さが決まっています。

 

ただ、私個人としては、街中のグラフィティはおもしろいと思います。美術館のなかの作品とは違い、多くの人の目に触れる、その影響力は大きいです。パブリックアートとして街を活性化させたりすることもあるとは思います」(高橋弁護士)

 

日光市はこの問題をどうとらえているのか。質問を送ったところ、日光市役所建設部から回答を得た。

 

落書きについては「令和8年3月22日に通報があり、早急に所有者へ情報提供をおこないました。警察へも相談しておりますが、対応は所有者の責任及び判断となると助言をいただいております。そのため、市として被害届の提出及び落書きの塗りつぶし等の対応はしておりません」とのことだった。

 

そして、防犯の面からも、市で定期的に巡回をおこなっており、落書きだけでなく窓の破損などについても所有者へ情報提供しているが、修復の対応はされていないという。そのため市のほうで、応急措置として窓を封鎖するなどの作業をおこなっているとしている。

 

また、「鬼怒川温泉地内の大規模老朽化施設についてはSNSや動画サイト等でたびたび取り上げられておりますが、ご承知のとおり、施設への不法侵入及び落書き、備品の破壊・盗難等は犯罪であります。また、施設内は老朽化により、非常に危険な状態であり、不法侵入した場合、大きな事故になりかねません」と注意を呼びかけている。

 

鬼怒川のある温泉ホテル経営者はこう語る。

 

「いまの所有者は、誰になっているのかは分からない。ただ、解体するにも億単位のお金が必要だから、解体しようにもできないのではないか。県や市のほうで解体してほしいが、金額も大きいし難しいのだろう。ここだけではなく、廃業して廃墟みたいになった建物があって、鬼怒川全体のイメージダウンにもなる。早くなんとかしてほしい」

 

こうした問題は鬼怒川に限ったことではない。自治体が解体できるような法整備や、国が解体の補助金を出すなどの対策も進めていく必要がありそうだ。

 

画像ページ >【写真あり】スパイダーマンの仕業? 高い壁の上に描かれた落書き(他2枚)

出典元:

WEB女性自身

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