高市早苗首相(65)が熊本地震の被災地を視察した動画が今、物議を醸している。首相官邸がXなどに投稿したもので、BGMとともに高市首相が現地の人々と言葉や握手を交わす場面が収められている。
8月5日の定例記者会見で、この動画を作成した意図を記者から問われた木原稔官房長官は、次のように答えた。
「被害の状況、視察した際の様子を国民の皆様にわかりやすくお伝えするための手法の一つだと考えております」
今、ネット上では動画に対し「首相のプロモーションビデオだ」などといった批判が起きているが、ある政治部記者は「まさか炎上するとは官邸は想像していなかったでしょう」として次のように語る。
「今回の被災地視察は、ベテラン自民党議員からも『今行けば、被災現場を混乱させ、人命救助や復旧作業を中断させてしまう』と危惧されていたにもかかわらず、高市首相が強行したという背景があります。官邸はこれ以上の炎上を防ぐため、世論の動向に神経を尖らせているようです」(前出・政治部記者)
そうしたなか、映像製作のプロからは「動画そのものは、とても秀逸な出来栄えです」と評価が高いという声が聞こえてくる。
テレビ朝日のプロデューサーとして活躍、AbemaTVの立ち上げにも参画した映像プロデューサーの鎮目博道氏に聞いた。
「全体的には『腕のあるプロによる、きっちりした、よくできた映像作品』という印象を受けました。なかでも、SNSでは批判が多かったBGMですが、動画ではピアノの曲が使われています。今回のようなテーマの動画では、あおりすぎず、それでいて静かに心を揺さぶる静かめのピアノ曲がいいことは、映像関係者の間では常識です。しかもこの動画では、しんみりしたトーンのいい曲を使っていて、観る人の琴線に触れます」
さらにピアノの曲調、リズムに合わせて場面が編集されているという。
「ピアノ曲のテンポに合わせてカット(場面変更)がおこなわれているんです。こうすると、気持ちよく動画の中に引き込まれていきます。すべてが計算されていますね」
そして鎮目氏は「素人が片手間に撮影している映像ではありません。構図もしっかりしている。プロの仕事です」と断言し、その理由を続ける。
「撮影段階で『さすが』と思ったのは、(ピントが合う範囲とボケる範囲に関係する)被写界深度を浅くしていることです。浅くすることで、『一部分にピントが合って、他の部分はボケている』という映像になり、『ふわふわする感覚で感情が揺さぶられる』と言われています。
わかりやすいのは、高市首相と熊本県の職員が会議をするシーンです。最初は高市さんの手前に座る職員にピントが合っていますが、ほどなくして高市首相に合わせています。これは『ピン送り』と呼ばれる手法で、観ていると引き込まれてしまいます。
さらに編集段階では、高市首相がもっともいい表情を浮かべながら握手をするシーンがスロー映像になっているところが優れています。
さりげないテクニックですが、すべてが映像文法的にうまい。プロのテクニックがいっぱい散りばめられ、しかも短時間で仕上げられているので、相当な技術を持った方たちによる仕事でしょう」
完成度が高かったからこそ、かえって「今は違うだろ」という反発を生んでしまったのかもしれない。
画像ページ >【写真あり】「すべてが計算されている」波紋を呼んだ高市早苗“プロモーションビデオ風視察動画”(他1枚)
