こばやし元樹(写真:本誌写真部) 画像を見る

「『ガス人間』の配信が始まってから、吉田警部役の自分の写真がネット上に広まっているのを見つけて、作品の人気ぶりとすさまじさを改めて実感しています。僕のSNSへのコメントも波のように押し寄せてきて、驚きました。今、じょじょに冷静さを取り戻してます」

 

そう、穏やかに微笑むのは、Netflixで配信中のオリジナルドラマ『ガス人間』で、吉田警部を演じている俳優のこばやし元樹さん(52)だ。

 

7月2日から世界配信されている『ガス人間』(全8話)。1960年の東宝特撮『ガス人間第一号』を原案とするSFスリラーで、Netflix週間TOP10(シリーズ)で1位を獲得。Netflix週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)4位にランクイン。世界28カ国と地域でTOP10入りする人気ぶりだ。

 

生放送中のテレビ局で発生した人間の爆死事件をきっかけに、不可解な連続殺人事件が世間を震撼させる。事件を追う主人公の岡本刑事役に小栗旬(43)。記者の甲野役に蒼井優(40)。こばやしさん演じる吉田警部は、岡本刑事の上司にあたるが、その悪徳刑事ぶりが話題となっている。

 

「吉田という役は、すごく“いい役どころ”で、自分の力で何かをしたという感覚がなくて。片山慎三監督の演出をはじめ、共演者やスタッフのみなさんに助けられて、一生懸命ついていった結果です」

 

裏社会ともつながりが深く、不気味さが際立つ吉田警部。ガリガリに痩せて、白髪交じりの髪型も独特でメガネ越しの目つきが鋭く、見た目から得体の知れない不穏さがにじみ出る吉田と、こばやしさんの素顔の柔和さとのギャップにも驚くが……。

 

「もともと65kgあった体重を、普段は55kgをキープするようにしていますが、衣装合わせのときに片山(慎三)監督から、『頬がこけた感じがいいです』みたいにと言われましたので、48kgまで減量しました。シンプルに食事を、朝食を食べて、昼は抜いて、夜は少しだけにしました。

 

撮影の2週間前から、そして撮影中は、食事はバナナ、ナッツ、ヨーグルトだけ。朝晩、家で、有酸素運動の動画を見ながら1時間ほど体を動かして汗をかいていました。強制されたわけでもないですし、自分が器用ではないので、役のために何かしたいと、まあ自己満足ですかね(笑)。

 

吉田というキャラクターを想像するだけでは埋まらない感じがあり、身体的に追い込むことで、彼の持つ、心の飢え、支配欲、承認欲求、劣等感など人間性を捕らえようとしたんです」

 

それが活きたのが、撮影初日のことだったと振り返る。

 

「3話で、吉田が、事件の証拠をもみ消すために殺人を犯すシーンがあり、その撮影が、僕の初日でした。現場で銃を手にして引き金を引いたときに、『快感』を得られたんです。頭でイメージしていただけではなく、実際に行動したことで、吉田の暴力性、支配欲が満たされる感覚を。

 

ロケ地も、廃墟となった植物園で、朽ち果てた感もありつつ雰囲気のあるとこで、吉田にぴったり合っていて、その場所に溶けこめて、監督の演出もあって、あの日“吉田になれた”気がします」

 

初日の撮影で、手応えを感じたこばやしさん。ただ、このシーンの台詞はのちにアフレコになったという。

 

「髪も伸ばして体も痩せて、風貌は異様な感じになっていましたが、監督から、『なにか癖があったほうがいいですよね。癖はありますか?』と提案をいただいて。

 

僕は、エラが張っているので、『歯を食いしばっているのはあるかもしれませんね』とお伝えした所、歯を食いしばり、口を開かずに喋るのを吉田の癖にすることになりました。でも、実際、奥歯を食いしばって、口を開けずに台詞を言うと、何を言っているかわからないんですよ(笑)」

 

撮影中に試行錯誤を繰りかえすうちに、「口は閉じたまま、奥歯の食いしばりを少し緩めて、前歯だけで話すようにすると、クリアに聞こえる」と、コツを発見したそうだ。

 

「なので、最初の頃に撮影したシーンは、後からアフレコで台詞を録音しています。後半の撮影は、口を開かずに話すコツをつかんで喋っています。ぜひ、リピートしてご覧になって、吉田のしゃべり方の変化をチェックしてみてください(笑)」

 

そして、何より、吉田警部のいちばんの怪演ぶりは、第5話のボウリング場の場面だ。

 

ピンの離れたスプリット(離れた位置に複数のピンが残る難しい状況)「スネークアイ」をクリアしなければ命を取られるという賭けをさせられるが……超難関をクリアした吉田が、奇妙な喜びのダンスを踊る場面だ。

 

このことから吉田は、“ボウリングマスター”と呼ばれて話題となった。

 

Netflix Japan公式サイトが、吉田警部の見せ場シーンをピックアップした動画をYouTubeで公開したところ、57万回以上再生を記録した。

 

「実は大学時代、ボウリングをよくやっていて、スコアも200点以上出したこともあります(笑)。このシーンで、僕は、薄汚れたノースリーブのランニングを着ていますが、ガリガリに痩せていて、いい感じの緩みが出るようにと、僕自身が用意したものです(笑)。

 

監督が、吉田の無様な人間の部分を、愛おしく描いてくださっていて。なんか自分でも役のためにできないかと思い、でも僕は自前の古いシャツを持っていっただけです」と、謙遜する。

 

2024年に行われた『ガス人間』の撮影で、ボウリングの場面は、こばやしさんのクランクアップの最終日に、一日かけて撮影したという。

 

「撮影前に、監督から、海外のグループのダンス動画を見せてもらい、『こんなステップで』と、言われて。ピンを倒したあと、踊り出します。最初の数ステップは、参考にした動画からインスピレーションを受けて、真似事みたいに踊ってみましたが、ぜんぜん動画のようには踊れていなくて(苦笑)。

 

まあ、そのうちカットかかるだろうと思っていたら、ぜんぜん終わらないんです。覚えた振りが終わっても、延々とカメラは回っているんです。もうやるしかないので、必死で、動きを絞り出しています。なので、頭で考えてやったことではありません(笑)。ただただ必死でした。ひょっととしたら監督も、そのギリギリに追い込んで、僕から出てくるものを待ってくれていたかも知れません。

 

ヤクザの藤代会の大友リキ役の松浦祐也さんが、現場でアイデアを出される方で、僕一人じゃなく、松浦さんや他の皆さんも一緒になって、踊ってくれて、うわ~っと盛り上がり、面白いシーンになったな~と思いましたが、残念ながら、使われていませんでした」

 

撮影最終日で、半日以上ゆっくりと何度も何度も踊り、スタッフからは“ヨシダンス”と呼ばれたという。

 

「何テイクも撮っているので、毎回、延々とカットがかからなくて、なので配信で使われているのが、どのテイクのどのあたりのものかも、分からないんです(苦笑)。

 

この前日に、激しい格闘シーンも撮り終えていて、僕も、『今日で、吉田とお別れなんだな~』と思うと、ちょっと寂しかったですね。本編の物語とは関係のない、このボウリングの場面を、みなさんに喜んでいただけて、動画まで出してもらってありがたいですよね。そんな僕は、踊りまくって終わりました(笑)」

 

その後、作品が完成すると……。

 

「出来上がりを見て、小栗(旬)さんが、『不気味だった』と(最大の褒め)言葉をかけてくれました。今の僕があるのは小栗さんのおかげです。まさか、自分の人生に、小栗さんが現れるなんて、考えないじゃないですか。僕の恩人です。感謝しかありません」

 

【PROFILE】

1974年3月11日、兵庫県出身。大学卒業後、アメリカの演技の超名門のNYリー・ストラスバーグ演劇映画研究所で学ぶ。NY在住の日本人演劇集団『俳優集団』結成。俳優・プロデュース・アクティングコーチも務める。7月26日(日)~NHKプレミアムドラマ『勿忘草の咲く町で』、テレビ大阪『夫に不倫をお願いされました』にも出演中。

 

画像ページ >【写真あり】『ガス人間』で悪徳刑事・吉田を怪演した、こばやし元樹(他1枚)

出典元:

WEB女性自身

【関連画像】

関連カテゴリー: