8月18日、米トランプ政権が「職権を乱用している」との理由で、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長らを制裁対象にしたと発表したことが、世界中に衝撃を与えている。
「ICCはオランダ・ハーグに本部を置く、各国政府や国際機関から独立した国際裁判所です。2002年に設立され、日本を含む125か国・地域が加盟していますが、アメリカ、ロシア、中国、イスラエルなどは加盟していません。
人道に対する犯罪や戦争犯罪などを捜査対象とし、2023年には、ロシアのプーチン大統領に戦争犯罪容疑で逮捕状が出されました。また、2024年には、イスラエルのネタニヤフ首相が、戦争犯罪と人道に対する犯罪容疑に当たるとして逮捕状を出されました。トランプ大統領はかねてからICCの判事や検察官を次々と制裁の対象にしてきましたが、今回の件は友好国イスラエルのネタニヤフへの逮捕に反発したためともみられています」(外信部記者)
制裁の主な中身は、米国の金融システムからの排除や渡航制限を柱とする。
「制裁の対象者が米国に保有している銀行預金、証券、不動産などの財産がすべて凍結されます。銀行口座から預金の引き出しができなくなり、クレジットカードも使えず、メールなどのサービスも受けられなくなります。渡航制限で、本人や家族の米国への入国も原則、禁止されます」(同前)
今回、制裁を受けた赤根氏は、著書を出版している文藝春秋のXを通じて、以下のようなコメントを発表している。
《今回の私に対する制裁はある程度予期していたことで驚きはない》
《重要なのは、これを国際的な『法の支配』の終焉の始まりとさせないこと》
《日本と日本の皆様の支援が重要な鍵となるだろう》
トランプ大統領の“圧力”には屈しないとの宣言だが、赤根氏の“法の番人”であるとの自負は、2023年にロシアのプーチン大統領に逮捕状を出したときにも示されていた。
「ロシアはプーチンへの逮捕状の報復として、2025年11月、赤根氏らを逆指名手配し、本人不在のまま有罪判決を下す対抗措置をとりました。ロシアでは政権にとって邪魔な相手が“暗殺”されることもたびたびありますが、このときに赤根氏は『裁判官は仮に1人が死んだとしても、いくらでも替えが効くものです』と発言。裁判官としての覚悟が驚きと賞賛をもって受け止められたのです」(同前)
今回の制裁をめぐっては、各国から非難の声が相次いでいる。
「オランダは制裁を認めない。裁判所と職員を全面的に支持する」と、同国のベーレンドセン外相は自身のXで米国の制裁を強く非難し、フランス外務省は「あらゆる脅迫に反対し、標的とされた裁判官らへの連帯」を表明した。スペイン、ドイツなどもそれぞれ強い懸念を表明している。
そして今、日本の高市早苗首相の言葉が“注目”されている。8月19日、赤根所長が制裁対象にされたことについて記者団に問われた高市首相はこう答えた。
「大変残念に思っております。これからも米国を含む関係国と意思疎通を継続しながら対応して参ります」
「残念」という“お気持ち表明”に、Xにはこんな不満の声が充満した。
《『残念』と弱腰コメントしか言えない高市早苗が国民として『残念』だよ。》
《みな、アメリカのしたことを問題にしていますが、日本だけ、自分の気持ちの話でした》
高市首相は今年1月日、赤根氏の表敬訪問を受けている。その際、「国際社会における法の支配の維持・強化に向けてこれからも日本は両裁判所をしっかり支援していくので、頑張ってほしいと心からのメッセージをお伝えしました」と語っていた。それがいざ、「法の支配」の危機が現実になったとき、形だけの抗議すらできなかったというわけだ。
高市首相の対米外交を政治アナリストの伊藤敦夫氏がこう読み解く。
「高市外交の象徴的なケースですよね。アメリカには一切、モノが言えない。ひたすらアメリカのご機嫌を取ることが外交だと思っていますから、あえて厳しい言葉をアメリカに対して発信するような、そういう外交的な感覚は持っていないんじゃないですか。靖国参拝を止めたのもアメリカに言われたからだという話があちこちから聞こえてくるくらいです。
そもそも日本政府の公式の英語発表は『unfortunate』。これは『残念』というふうに報道されていますが、『運が悪い』という意味でもあるんですよね。高市さんが、本音では運が悪いと考えているとしたら、抗議しないことがどれだけ重大なことがわかっていないんでしょうね。そういう発想だと、国際社会の中でますます孤立していく。そこまでは考えが及ばないんでしょうね」
当のアメリカは、北朝鮮の金正恩総書記との米朝首脳会談を画策し、米韓合同軍事演習を縮小。同盟国に配慮した日本の存在など眼中にないのかもしれない——。
画像ページ >【写真あり】高市首相の頭をよくみると……(他3枚)
