「反省がないところには教訓も生まれない。だから、同じ間違いを繰り返すんです」
元経産官僚で政治経済評論家の古賀茂明氏は、そう警鐘を鳴らす。
日本のアニメや漫画、食文化などの海外展開を支援するため、2013年に安倍政権の肝いりで設立された官民ファンド「クールジャパン機構」。政府はこれまでに約1400億円を出資してきたが、累積赤字は約540億円に達した。
経産省は2027年度予算の概算要求を見送り、同機構を廃止する方向で調整している。ところが、その一方で、経産省は8月20日、「エンタメ・クリエイティブ産業戦略2026」を公表した。2033年までに日本発コンテンツの海外売上高20兆円を目指す「ものがたり大国5か年計画」を推進するという。
「クールジャパン機構が巨額の赤字を出して終了するにもかかわらず、再び“国主導”でコンテンツ産業を後押しする計画が始まったことに対しては、批判の声も出ています」(全国紙記者)
■クールジャパン機構の関係者が座長に
さらに気になるのが、新戦略を取りまとめた有識者会議の座長を務める人物だ。
「座長を務める中村伊知哉氏は、元総務官僚で、2013年には政府のクールジャパン推進会議の『ポップカルチャー分科会』で議長を務めるなど、以前から国のコンテンツ政策に関わってきた人物です。
一方、2016年から2023年までは吉本興業ホールディングスの社外取締役でした。その在任中、クールジャパン機構は、吉本興業とNTTグループによる教育コンテンツ事業に最大100億円を出資すると発表。実際の投資額は31億円でしたが、機構は2023年に撤退しています。
中村氏が投資決定に関わったことを示す資料は確認されておらず、利益相反と断定することはできません。ただ、政策を進める側と、支援を受けた企業の役員という二つの立場が重なっていた以上、経緯を説明すべきだとの声が出ています」(前出・全国紙記者)
赤字を生んだクールジャパン政策に関わってきた人物が、再び新戦略の座長に就く。この人選に、古賀さんは官僚組織の“変わらなさ”が表れていると指摘する。
「役所が何かを一度作ったら、絶対になくならないんです。失敗した事業を廃止しても、『今度はこれまでと違う』『今回はうまくいく』と説明して、新しい仕組みを作る。そうしなければ、担当課の仕事も予算もなくなってしまうからです」
