■失敗しても誰も責任を取らない
そもそも、「いままで、ほとんどの官民ファンドが失敗に終わっている」と古賀さんは指摘する。
「それは、官には民間を上回る“目利き能力”がないから。官が入る意味があるとすれば、民間にはできないことができる場合ですが、実際に官にできるのは、損をしても事業にお金を出し続けることくらいです。原資は自分たちのお金ではなく、国民の税金ですからね。失敗しても自分の腹は痛まないし、これまで責任を取った人もいません」
しかし、「この甘い姿勢がプロジェクトを失敗に導く」と古賀さん。
「日本の漫画やアニメが世界で高く評価されていることは事実です。しかし、その成功の裏には、作品を世に出せず、生活苦にも負けないで挑戦を続けてきた無数のクリエイターがいます。
寝る暇も惜しみ、全身全霊を傾けた人たちのなかから、ほんの一握りの成功者が生まれます。ところが国は、その成功だけを見て、『日本の漫画なら何でも売れる』と思い込んでしまう。それが失敗のもとなんです」
成功する作品や事業を事前に選び出すことは、経験を積んだ民間の投資家にとっても難しい。まして、失敗しても誰も責任を問われない仕組みのもとで、官僚が国費を使い、「最後に勝ち残る作品」だけを見極めることなどできないというのだ。
■「高市首相は反省が大嫌い」
古賀氏さんによれば、官民ファンドには、失敗を検証する仕組みも欠けているという。
「新しい事業を作るための研究会や審議会はあります。しかし、失敗した後に『なぜ失敗したのか』『誰に責任があるのか』を検証する審議会はないんです。責任を追及される側が、自分からそんな組織を作りたいと思うはずがありません」
さらに、クールジャパン機構を含む多くの官民ファンドは、安倍政権の成長戦略として作られてきた。その安倍政権の政策を継承する高市首相のもとで、十分な検証が行われるのだろうかーー。
古賀さんは厳しい見方を示す。
「高市さんは反省が大嫌いな人です。安倍政権時代に作られた官民ファンドの失敗を認めれば、安倍さんの政策に傷をつけることになる。反省した途端に、自分たちの負けを認めたように感じるのでしょう。でも、反省がないところには教訓も生まれません。そうなれば、同じ間違いを繰り返すだけです」
すでに海外で売れ始めている作品や企業に国が投資すれば、表面的には「成功」を演出できる。しかし、「そうした有望な事業には、国が介入しなくても、すでに民間資金が集まっている」と古賀さん。
反対に、まだ成功するか分からない事業を官僚が選べば、国民の税金が失われる可能性が高い。古賀さんは、官民ファンドそのものを廃止すべきだと訴える。
「国にお金がないと言いながら、成功率の低い官民ファンドに莫大な資金をつぎ込む必要はありません。国民のための政策になっていないんです。こんな無駄な事業はやめて、その分を社会保障に回すなり、国の借金を返すなりしたほうがいい」
名前と看板を掛け替えただけで、失敗の構造まで引き継いではいないか。「ものがたり大国」を掲げる前に、まずは540億円もの赤字を生んだ“失敗の物語”を検証する必要があるだろう。
画像ページ >【写真あり】「エンタメ・クリエイティブ産業戦略2026」を取りまとめた有識者会議の座長を務めた中村伊知哉氏(他1枚)
