9月2日、氷川きよし(49)がカバーアルバム『氷川きよし 美空ひばりを歌う』(日本コロムビア)を発売した。同作は、氷川が長年敬愛してきた美空ひばりさんの名曲を歌い継ぐ一枚。『東京キッド』『悲しい酒』『川の流れのように』など新録6曲と、これまでに発表された7曲の全13曲が収録されている。
氷川は今回のアルバムについて、こうコメントしている。
「美空ひばりさんは、今もなお尊敬し続ける偉大な存在です。美空ひばりさんの音楽の素晴らしさを、今の私だからこそ表現できる形でお届けしたいという想いから、このアルバムを制作しました」
さらに、ひばりさんの歌が新しい世代や世界中の人々へ届くことを願っているとも語っている。
9月6日には49歳の誕生日を迎えた氷川。2000年に『箱根八里の半次郎』でデビューしてから26年目となる今年、なぜ改めて美空ひばりさんの歌と向き合ったのだろうか。
実は、デビュー当初の氷川にとって、ひばりさんは簡単にその歌をカバーできる存在ではなかったという。
長年、氷川を取材してきた月刊『歌の手帖』編集長の村田弘司氏が明かす。
「ひばりさんは同じレコード会社の大先輩ということもあり、氷川さんはものすごく尊敬していました。当初は、自分が納得できるまではひばりさんの歌をカバーしないという感じだったんです。それくらい氷川さんにとって、ひばりさんの歌は大きな存在だったんですね」
デビュー後に発表していた『演歌名曲コレクション』では、さまざまな演歌の名曲をカバーしていた。しかし、ひばりさんは「特別な存在」だった。初めてその楽曲をカバーしたころ、村田氏は本人を取材している。
「そのとき氷川さんが、『今ならひばりさんの歌が届けられると思った』というようなお話をされていました。それ以降、コンサートなど大事なところで、ひばりさんの曲を歌われる印象があります」
ひばりさんの曲を歌うことに慎重だった背景には、氷川自身が抱えていた“ある思い”もあったという。
「もともと氷川さんはポップス系から歌に入って、水森英夫先生のもとで演歌を学んだ方なんです。昔は、子供のころから演歌を歌ってきたほかの演歌歌手に比べて、自分はまだ未熟だという意識があったようです」
それから20年以上。氷川の歌い方も、歌手としてのあり方も大きく変化した。
2022年末をもって歌手活動を休止し、約1年8カ月の休養期間を経て、2024年に活動を再開。近年は「KIINA.」として、演歌だけでなくポップスやロックなど、ジャンルの枠にとらわれない表現を続けてきた。
村田氏は、休養前から模索していた今後の歌の方向性が、活動再開後、より明確になったと感じているという。
「今の氷川さんは、より自由になったと思います。ひばりさんのカバーだからこう歌わなければいけない、という制限を設けるのではなく、ひばりさんの魂を自分なりに届けようとしている。特に最近は、ひばりさんを真似するのではなく、氷川さんならではの歌唱法で、その魂を届けている感じがすごくします」
村田氏がもう一つ注目するのが、氷川のリズム感だ。
「氷川さんはポップスを歌うときのリズム感がすごくいいんです。拍にただ合わせるのではなく、少し前に行ったり、遅らせたりする感覚が絶妙です。ひばりさんも演歌だけではなく、ポップスも歌えるシンガーでした。『川の流れのように』も演歌というよりもバラードですから、氷川さんがどういうリズム感で歌っているのか、そういうところにも注目して聴いてほしいですね」
そして村田氏は、今回のカバーをこう受け止めている。
「ひばりさんが歌った名作に、氷川さんが新しい風を吹き込んで、あらためて世の中に放っている。それがすごくいいなと思います。こうやって素晴らしい歌手が歌い継ぐことで、名曲は残っていくんだと感動しました」
49歳を迎えた今、あらためてひばりさんの歌に向き合った氷川。さまざまなジャンルに挑み、自分らしい表現を手にしたからこそできる、新たな歌い継ぎなのかもしれない。
画像ページ >【写真あり】「偉大な存在」氷川きよしがカバーを封印していた国民的歌手(他1枚)
