美容整形業界のリアルな光と闇を描き出し、大きな反響を呼んでいるNetflixで配信中のドラマ『ダウンタイム』。松岡茉優(31)主演の同作において、もう一つの主役とも言えるのが、劇中に登場するリアルすぎる特殊メイクや造形の数々だ。
これらを手掛けた特殊メイクアップアーティストのAmazing JIROさん(51)は、自身のXで渡部篤郎(58)のダミー人形の写真を公開し、700万回以上も表示されるほどの大きな反響を呼んだ。こうした反響について、Amazing JIROさんに話を聞いた。
「今回は、特殊メイクはもちろん、ビフォーアフターを作るのも何件もやりましたし、一つの作品で本当にたくさんの造形物も作っています。もちろん見てもらいたいのですが、はじめからそのことを言い過ぎると、見る人たちが『造形なんでしょ』という先入観で見てしまうかもしれない。それは避けたいな……と、複雑な気持ちでしたね」
そこで、当初は作品への没入感を優先して公表を控えていたという。しかし――。
「だんだんと、見てくれた人が増えれば増えるほど、『ここも作ってるんだよ』というのを明かしたい、という気持ちも出てきてしまいまして(笑)」
Netflixにも確認を取り、OKを得られた情報を徐々にオープンにしていったところ、想像よりも大きな反応があったという。
現場でも、その精巧すぎるダミー人形が、さまざまなエピソードを生んでいたそうだ。
「渡部さんも、研ナオコさんも、手術シーンのメスを入れるところはすべて造形です。キャストご本人が、手術でメスを入れる直前までは白い布を顔にかけてベッドに寝ているわけです。メスを入れるシーンになると、ダミーに入れ替える。その入れ替えの作業を見ていない俳優さんのなかには、ダミー人形を出演者ご本人だと勘違いして『おはようございます』って、あいさつされている方もいましたね(笑)」
なかでも印象的だったのが、田中みな実(39)の反応だったという。
「田中みな実さんは、手術シーンの撮影のとき、ダミー人形を見て、俳優さん本人と勘違いしたみたいで、スタッフさんに、『ブランケットをかけて差し上げて』って頼んでいたんです。撮影現場が少し寒かったのを気遣われて。
造形なので、スタッフたちが反応に戸惑っていると、田中さんが(ダミー人形であることに)気づいて……、ということがあったのはよく覚えています」
その反対の一コマも――。
「スタッフもちょくちょく間違えていたんです。ダミーじゃなくてご本人がベッドに横になっているのに、普通に触りに行っちゃうとか。あぁ、ご本人かと気づいてびっくりして(笑)」
これほどまでに精巧なダミーが求められた理由を、Amazing JIROさんは次のように語る。
「これまでも、そっくりなダミー人形というものはわりと作ってきてはいるんです。たとえば等身大マネキンを展示すると、本人にそっくりだという反響をそれなりにもらったり。しかし、今回のような形で評価されるのは初めてかもしれないですね。
『ダウンタイム』では、ダミー人形がきちんと本物に見えなきゃいけないし、メスを入れるという重要なシーンで、カメラが寄るところにダミーが使われる。もともと、刀で切られて体の一部が吹っ飛ぶシーンなどは、わりと引きの画が多いんですよ」
かつてない至近距離での撮影が求められたことで、ダミー人形の精巧さに改めてスポットが当たっているようだ。 今回、Amazing JIROさんのチームは総勢13名のキャストの特殊メイクを手掛けた。
「撮影現場では常時3人くらいのスタッフが動いていました」
制作の現場と撮影の現場との緻密な連携が求められた。この膨大な作業を支えたのが、最新の3Dスキャン技術だという。
「今は目を開いた状態もスキャンで素早くできるというのが僕らはすごく助かっています。以前は、型を取る印象材を使っていましたが、それだと印象材の重みで、顔の形がどうしても変わってしまうんですよ。
でも今回は、美容整形で、顔の形をリアルに変えなきゃいけない。ビフォーの形が歪んでたら、ドラマ自体に大きな影響を与えてしまいます。スキャンの技術があったから、本人の顔そのまんまの型取りができたので、そこは助かりました」
ダミー人形作成のほか、特殊メイクも緻密な作業が求められた。特に難易度が高かったのが、研ナオコ(73)らに施した「若返り」の表現だったそうだ。
「基本、特殊メイクは老けメイクのほうが得意です。若返りのほうが難しいんですよ。特殊メイクって、足していくことは比較的簡単で、上がっている皮膚に垂れた表現を加えることはできますが、垂れたものを削り取ることはできません。なので今回は、医療用テープで顔のパーツを引き上げることを最初にやって、そこにできたギャップをシリコンピースでうまくカバーする、というような作業を重ねました」
その作業に、研は快く向き合ってくれたという。
「研さんは本当に嫌な顔一つせず、『今日も変身!』みたいな感じですごくポジティブに取り組んでくれたので、とても助かりましたね」
さらに、ドラマで“整形依存症”の役を演じた安達祐実に施したメイクでは、こんな葛藤も――。
「“美容整形をやりすぎた顔”が、結果的に映像で見て、特殊メイクになっちゃうかなと思ったんで、そこの塩梅は難しかったですよね。美容整形をやりすぎた顔だけど、あくまでもリアルに見せなきゃいけないっていう、バランスは難しかったです。もっと攻めてもよかったなとか思う瞬間もあれば、ちょっと大げさかな、と思う瞬間もあったり。いちばん、視聴者の方に見てもらわないと答えが出ないなと思った部分でした」
最後に、Amazing JIROさんは作品全体の反響について改めてこう語る。
「コメントなどを見ていてうれしいのは、やっぱり、造形である、特殊メイクであるというところに意識が向かずにドラマを見てくださったという声ですね。その点では、バランスがうまくいったというか、僕としては今までやってきた経験がかなり生かされた集大成のような手ごたえはありますね」
次はどんなリアルな作品で私たちを驚かせてくれるか、期待が高まる。
【後編】『ダウンタイム』、『国宝』吉沢亮の老けメイクも手掛けた特殊メイクアーティストが追求する「アナログにしかできないこと」へ続く
画像ページ >【写真あり】リアルすぎ!『ダウンタイム』に登場した渡部篤郎のダミー人形(他1枚)
