【前編】田中みな実も「毛布かけてあげて」と騙された…『ダウンタイム』のリアルすぎる“ダミー人形”生んだ特殊メイクのこだわりから続く
話題沸騰中のNetflixシリーズ『ダウンタイム』。ドラマのなかで披露された極限までリアルな特殊メイクやダミー人形が、SNSを中心に注目を集めている。ドラマを彩る精巧な作品の数々を制作したのが、特殊メイクアップアーティストのAmazing JIROさん。自身のXで渡部篤郎(58)のダミー人形の写真を公開すると、700万回以上も表示されるほどの反響があった。
そんなAmazing JIRO氏だが、これまで携わった映画やドラマでは「JIRO」という名義でクレジットされることが多かった。『ダウンタイム』から「Amazing JIRO」という表記に変わっている。本人が語る。
「wikipediaをみると、なんか年齢不詳とか書いてあるようなのですが、僕自身は別に隠してないです。今、51歳で、本名は坂上和隆です。ぜんぜん、JIROじゃないんです(笑)。最初はJIROで活動していたんです。それが、インスタグラムを始めるときに、うちの会社が『Amazing studio自由廊』という名前なので、開設に合わせてアカウント名をAmazing JIROとしたんです。もともと、Amazingっていう言葉が好きなんです。素晴らしい=ワンダフル、みたいな直訳されやすい意味じゃなくて、Amazingはもっとアバウトに感動、感激のようなイメージを伝える言葉だと思うんです。
それ以降、仕事で海外へ行ったら『Amazing JIRO』ってまわりから呼ばれるようになって。だんだん『Amazing JIRO』いいなぁ、と。それに、自分でAmazingと名乗ったら、なんだかずっとケツ叩かれてる状態というか、Amazingにふさわしい仕事をしなくちゃ、という自分にある種の十字架を背負わせました、という感覚です(笑)」
そんな彼が、今回『ダウンタイム』のクレジットで「Amazing JIRO」と名乗った転機は、ある大物俳優とのやり取りがきっかけだったという。
「『Amazing JIRO』は、クリエイティブで自分発信のアートをやるようなときには名乗っていたんです。映像作品などでは『JIRO』と、分けてきました。
最近その接点がふんわりしてきていて、たまたま今回、現場で渡部篤郎さんから、『どうしてクレジットはAmazing JIROじゃないの?』と聞かれたんです。『いや、JIROで今までやってきていまして』と返したら、『ダメだよ、Amazing JIROにしなよ』と言ってくださったんです。
渡部さんのおかげで、勇気をもって『ダウンタイム』から『Amazing JIRO』になりました」
一躍脚光を浴びたAmazing JIROさんだが、特殊メイクの仕事では、主にCMなど広告業界での活躍が先行していた。映画やドラマの世界での大きな転機となったのは、Netflix作品『浅草キッド』での経験だったという。
「映画やドラマに僕らがメインで関わるようになったのは、Netflixとの仕事からなんです。それまでも、『進撃の巨人』や『シン・ゴジラ』などにも関わってはきました。それこそメインのキャラクターを作ってはいるんですけど、進撃の巨人なんかは、巨人をしっかり作りましたが、メイクというより造形に近かった。着ぐるみのようなものですから。
特殊メイクとして最初に参加した『浅草キッド』は、僕たちの中では大きかったですね。柳楽優弥さんをビートたけしさんに変えなきゃいけなかったですから。あれはハードルが高かった。監督の劇団ひとりさんには、それ以前にもバラエティ番組で何度も特殊メイクをしたことがあって。その縁で、映画を撮るから協力してほしいと言っていただいたんです」
それが、かなり冒険的なメイクだった。作品冒頭で現在のたけしを、特殊メイクを施した柳楽が演じていたのだ。そのリアルな表現も、当時大きな話題となった。
「ぜんぜん違う顔ですから。それでも、評判もよかったんで。すごくいい映画に仕上がっていたし、『浅草キッド』のおかげで、これから映像作品の仕事が増えていくんじゃないかという自信になりましたし、大きな転機になったと思いますね」
予感は的中。その後、Disney+『ガンニバル』の象徴的な大男の造形や、映画『国宝』での吉沢亮(32)、横浜流星(30)、渡辺謙(66)らの老けメイクなどを手掛けてきた。
「『国宝』では、シリコンメイクという、シリコンのパーツを部分的に貼ることでベースを残しつつ、顔の印象を変えるという技術をいろいろ試して、“いける”という手ごたえを得られたんです。偽物の皮膚と本当の皮膚がどこかでつながっているわけじゃないですか。そのつなぎ目を隠すのが特殊メイクにとっていちばん難しいところなんです。そこで培ったものが、Netflix『地獄に落ちるわよ』で戸田恵梨香さんに施したメイクでも生きましたね」
こうした試行錯誤の連続が、『ダウンタイム』でのリアルな美容整形表現に直結した。
近年、映像の世界におけるデジタル技術の進化は著しいが、Amazing JIROさんは、それらとアナログ技術との関係を次のように捉えている。
「デジタル化が進むと、やっぱり僕らのようなアナログを極めた技術を継承してくれる人って、どんどん減ってくるんだろうなとは感じています。ただ、今回の『ダウンタイム』は、みんな最初『CGでしょ』って思ったことが、じつはすべて特殊メイクだっていうことで多くの人に驚いてもらえた。そういったアナログの技術のおもしろさを追求したいと考える人も、出てきてくれるかもしれないですよね。
もちろん、僕たちもスキャンの技術など、デジタルに依存している部分はあります。それらを活用しながら、僕らの表現もより高いところを目指していけたらと。デジタルにアナログが食われて、僕らの技術の必要性がなくなる、ということはないと考えていますね。お互いのいいところを使って、もっとおもしろい表現に向かえるんじゃないかな」
テクノロジーと、職人技の共存に、明るい未来を見出している。枠にとらわれない彼の挑戦はこれからも続く。
「僕は映画やドラマというものだけをやりたくてこの業界に入ってきていないので、引き続き、誰もやっていないような何かを僕の技術でできるようなことがあれば挑戦してみたいなと思いますし、そこは楽しみにしているところですね。
芸術作品を作りたいのもありますし、あとはチャレンジングな屋外広告なんかも取り組みたいです。以前に、アディダスの10mくらいのサイズの久保建英選手を作りました。ああいったものもやっぱりおもしろいし、僕らの経験値が生かせる場でもあるんで。
いっぽうで、僕は飽き性なんで、ただ来るものだけだと物足りなくなってしまうんです。挑戦してみたいアートが今後も生まれ続けると思うんで、表現したい意欲が湧き続ける限りは、挑戦していきたいなと思ってます」
映画・ドラマ、屋外広告、アート作品……、次はどんな作品で、私たちをアッと驚かせてくれるだろう。
画像ページ >【写真あり】『ダウンタイム』で研ナオコの”若返り”に施した特殊メークのパーツ(他1枚)
