10月15日に発表された時事通信の世論調査では、高市内閣の支持率は42.4%。5カ月連続で下落し、政権発足以来、最低の支持率となった。16日には時事通信が世論調査の分析記事を配信。高市内閣を支持していた男性たちの間でも、“高市離れ”が進んでいると報じられた。
「男性の政権支持率が、前月の46.2%から42.0%に下落しました。一方、女性は41.8%から42.9%に微増し、男女の支持率がほぼ並んだ格好です。
さらに、農水大臣を辞任した簗和生氏(47)を一時続投させようとした高市早苗首相(65)の判断については、78%が問題視しています」(政治部記者)
高市首相の判断が疑問視される一方で、いまも4割以上が高市政権を支持している。
「多数派というのは、いつもキョロキョロしながら、『誰が一番強いのか』を探しているんです」
そう語るのは、思想家で、神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏(76)だ。
「今の社会では、決しておのれの非を認めないことが、『強さ』の記号として流通しています。誤りを認めて謝ったり、非を認めて反省したりするのは、本来ならその人が論理的で道義的な人間であることを証明するはずですけれど、今の日本ではそれは『弱さ』の記号として理解される。高市首相は、今も台湾有事をめぐる発言を撤回していません。非を認めないことが『強い指導者』であることの根拠だと考えているからです」
簗前大臣についても、内田氏は当初、高市首相は更迭しないと考えていたという。自らの人事判断の誤りを認めることになるからだ。
しかし、簗氏の陣営が衆院選の公示日に支援者を無料のシャトルバスで送迎した問題が報じられた。公職選挙法違反の疑いを国会でも追及され、擁護しきれなくなったのではないかとみる。
■「勝ちそうだから支持する」は株価と同じ
内田氏は、政治家を支持する側にも「強い人についていく」という心理があると指摘する。
「”勝ち馬に乗る“のは生存戦略としては合理的なんです。それは人間の本能に近い。別に政策に共感しているわけじゃない。その政策が自分に利益をもたらすからでもない。ただ強そうな政治家、勝ちそうな政治家に“乗る”機会を窺っているのです。
2009年に民主党が政権を取ったとき、周囲では、それまでずっと自民党に投票していた人たちが『次は民主党だな』と言い始めた。理由は『政権交代が起きそうだから』。株価と同じですよ。『上がりそうだから買おう』という感覚なんです」
男性の支持についても、内田氏は“生存戦略”という言葉で説明する。子どものころ、会社勤めの年配男性から「長いものには巻かれろ」「余計なことをしちゃいかん」と諭された経験が忘れられないという。
「つらいかもしれないし、悔しいこともあるかもしれない。でも、男が生きてゆくということは『長いものには巻かれろ』ということなんだよ、としみじみ説得されました。なるほど日本のサラリーマンはこういう気持ちで日々を生きているんだと思い知りました」
強い側につくことが生存戦略なら、その支持は必ずしも固定的なものではない。今回の男性支持率の低下は、高市政権が見放されつつある証ではないかと内田さんは考えている。
■なぜ高市政権を“過激派”と呼ぶのか
「多数派だから、中道的で穏健だろうと考えてはいけません。」
内田氏は、高市政権を“過激派”と評している。
「彼女は保守でも穏健でもない。過激派ですよ。自民党の長年の党是をことごとく覆しているわけですから」
台湾有事をめぐる発言や憲法改正、皇室典範の見直しなど、従来の政権が慎重に扱ってきた問題に踏み込もうとしていることが、その理由だという。
「本来なら保守派こそ、こうした方針転換には慎重になるはずなんです」
しかし、首相に逆らえば公認を得られず、次の選挙で議席を失いリスクがある。だから、自民党員たちも「長いものに巻かれる」ことで必死に生き延びようとしている、と内田氏はみている。
■「強いリーダー」と「強い日本」は別
「高市さんは、弱みを見せたらそこでおしまいだということを知っています」
そう語る内田氏は、国内で強いリーダーに見えることと、日本の国力は別問題だと指摘する。実際、国際通貨基金(IMF)の最新予測では、日本の名目GDPは2027年にインドとイギリスに抜かれ、世界6位に転落する見通しだ。
「政権の価値を決めるのは、国内での支持率じゃありませんよ。国際社会からどう評価されているか、です。その点で言えば高市内閣の評価は戦後最低だと思います。でも、日本人はそれを見ようとしない」
支持率という国内の数字だけでは見えてこない、日本の現実にも目を向ける必要があると内田氏は考えている。
画像ページ >【写真あり】高市首相に「私の大事な~」と重用されたが、結局辞任に至った大臣(他1枚)
