連載第11回
食べるなら今でしょ!ユアサ的NY最旬グルメ案内
ウォール街からさほど遠くもないが、日本人観光客があまり足をのばさないだろうニューヨークのレストランに、アメリカ人女性弁護士に引きずられて行ってまいりましたユアサです。ミシュランにも登場する、ニューヨークを代表するシェフのレストランで味わったスイーツがあまりにおいしかったので、今回はニューヨークのグルメトレンドをお話したいと思います。
まずはスイーツ!
日本の女性が注目しているスイーツというと、おしゃれな(アメリカ英語ではこれをファンシーと表現します)お菓子と、ブーム最高潮のパンケーキの2つに大別できるかもしれません。アメリカ以上に日本の女性たちのほうがカフェテリアなどのガールズトークの場のムードを大切にしているようにみえます。
いっぽうニューヨーカーは雰囲気よりも味を重視します。 たとえば、マンハッタンの美味しいパンケーキのお店には、運動靴のキャリアウーマンが毎朝8時にダッシュで駆け込んできます。
人気スイーツについても、アメリカだとビスケットやほかのデザートなども加わり、日本よりも多面的で多極化しているようです。アメリカのビスケットというと、多少フワフワ感のある菓子パンという感じで、パンのジャンルに一歩踏み込んでいるように見えるので、日本のものとはイメージがかなり違います。
西海岸でもニューヨークでも、今、最もトレンディなビスケットといえば、「ヴェジー ビスケット」でしょう。babycakes (BABYCAKES) のロゴ(ベイビーケイクスと発音)であまりにも有名な全米展開するベーカリー専門店のものが有名で、ニューヨークのダウンタウンにもすてきなお店があります。「ヴェジー ビスケット」のヴェジーは、ヴェジタブル(野菜)やヴェジタリアン(菜食主義者)と同じニュアンスです。ヴェジー ビスケットは丸くて、サクサクッと香ばしい自然な野菜の風味に舌が踊りだします。健康志向に鋭敏なトレンドといえます。ウォール街のユアサの友人女性たちの間では、babycakesの「チーズ ビスケットも大人気です。
そもそも、ユアサの辞書をひもとくと、ウォール街は文化的にはアメリカというよりヨーロッパの一部である、という基本コンセプトがあります(ニューヨークの食文化もビジネス文化も同様で、ユアサは以前、日本マクドナルド創業者の藤田田氏とこの点を語り合う機会がありました)。
チーズは、ヨーロッパを代表するフランス料理には欠かすことのできないデザートです。だから、ウォール街のキャリアウーマンたちに「チーズ ビスケットが人気なのも当然なわけです。ちょっとお疲れ気味な午後のオフィスでの会話モードも、チーズがあると一気にノリノリになります。
ここで、冒頭の美しい友人弁護士に、ユアサが引きずられて行った理由を少し明かします。
その29歳の女性弁護士は、頻繁にロンドンとニューヨークを行き来しているので、たまに会うとユアサは「こんどランチに行こう!と頑張る彼女を励ましていました。
今回もユアサは気軽に声をかけたところ、いつもは、にっこり笑顔を返してくれていた彼女が、氷の微笑を浮かべてこう言いました。
「タカシ!あなたは、わたしをランチにこれで何度誘ったと思っているの!こんなに誘っておいて、タカシ、あなたは一度だって実際にはランチにわたしを連れ出さない!いい!タカシの辞書で何と書いてあるかは知らないけど、そういう風にランチの誘いだけ何度もして、実行しないオトコをここでは最低のオトコというのよ!わかったの!タカシ!わかったら、今日こそ、ディナーにわたしを連れていきなさい!
かくして、ユアサは怒れるアメリカ人美女に耳を引っ張られるがごとく、彼女の選んだレストラン①へ。その道中で、彼女のご機嫌をとり結ぼうと、「ディナーの前にドリンクを」と提案をしました。すると、やっと彼女の美しい笑顔が戻ったのです。
話をトレンドに戻しましょう。
今、ニューヨーク女性の新しい合い言葉は「デザートみたいな紅茶」です。誕生日ケーキの、いわばレッド・ベルベットの芳しい香りと味覚を持ちながら、低カロリーなこのお茶は「Davids Tea」というニューヨーカーに愛されるティー専門店で購入できます。
このお店のプライドは〝お茶が人々を集わせ、つなぐ〟というハートにあります。ここの紅茶を飲むと、ユアサの友人の20代のデザイナーも、また多くのニューヨークの女性たちも、日常の疲れが吹き飛ぶと言います。
日本のパンケーキブームに匹敵するニューヨークのトレンドは、ビスケット以上に「デザートみたいな紅茶」だと、ユアサの辞書には記しておきましょう!
さあ、最後のトレンドは、怒れる美女に連れていかれたレストランを通して語ります。
ニューヨークのウォール街とミッドタウンとの中間の少し西側にあるミートパッキングという地域に「スパイス マーケット」という知る人ぞ知る有名レストランがあります。
ニューヨーカーのクラブのようなレストランで、全米からの予約客も多いお店です。
このレストランは現代ニューヨークを代表するトップシェフの1人、ジャン・ジョルジュ・ヴォンゲリシテン(日本ではヴォンゲリヒテンとの表記が多いですが、フランスではHの発音はしないのが一般なので、ユアサはヴォンゲリシテンと表記させていただきます)というミシュランでも有名な天才シェフが腕をふるっています。
あなたが彼との記念日に、あるいは明日出会うかもしれない新しい彼との夢のデートにパーフェクトなレストランのひとつ!であると、ユアサはここに保証します。
吸い込まれるように店内に入ると、夕食にふさわしい落ち着いたセクシーな薄暗さの中で、そのちょっと広大なスペースに圧倒されることでしょう。
カップルや親しい家族や友人たちが食事に来ているので、料理はシェアするのが当然、というのがニューヨーカーのセンスです。
ここで、突発的に、ユアサの独断による日本とアメリカのカップル比較をさせていただきたいと思います。
日本のレストランでカップルが来店すると、男性は男性でお決まりやお気に入りをオーダーし、女性はご自分のカロリー計算や、お肌の潤いなど多角的に独創的にメニューを検討されオーダーします。なおメニュー選びで、決められない男性に、このタイミングであきれる女性も数知れずとの声も聞きます。
さて、アメリカでは、メニュー選びは完全に恋人2人の共同作業です。日本での結婚式の司会の名ゼリフ「お2人の初めての共同作業を」が、ここアメリカでは、ファーストデートのレストランでのメニュー選びとなります。
なぜニューヨークの恋人は2人でオーダーして、2人でシェアして食べるのが当たり前なのでしょうか?
メニュー選びには、本人の人柄がにじみ出るから?
彼氏のこれまでの人生や、これからの2人の人生が透けて見えるから?
いやあ、残念ながら、それではニューヨーカーの正解とはとても言えないでしょう。
ヒントは、ニューヨークは大人の街です。
正解は、食事の後のふたりのキッスが同じ味になるから。
アメリカ人の日常生活で、恋する2人のキッスは当たり前なことです。
ちなみに、英語のキッス(kiss)のiの発音を上手にしようと思ったら、試しに「ウィットに富んだ」のウを、口をすぼめて、「ウィット、ウィット、ウィット」と3回言ってから、似た発音でキッスと発音してみてください。きっとすてきなキッス(の発音)になっていることでしょう!
さて、話を「スパイス マーケット」に戻します。
あなたが彼とメインディッシュをそれぞれオーダーすれば、お店の人は気をきかせ、シェアしやすいお皿盛りでサーヴされます。
ユアサもアメリカ人美女と、お魚料理(サーモン)とスパイス(香辛料)の程よく効いたインド風料理をシェアしました。2人ともが、うっとりするおいしさでした。
ちなみに、インテリアは東南アジアをモチーフにしていて、ニューヨーカーのハートを捉えるように工夫がこらされています。それこそ、映画や小説で有名な『華麗なるギャツビー』の世界が、今の世の中で生まれ変わったらこうなるのではというのが、ユアサの素直な感想です。
実は、ユアサは以前、この名店に別のアメリカ人美女と来たことがあります。
でも、そんなことは隠していても、突然女性はひらめくようです。女性がいきなり追及すると、必ずや男は目が点になるのであなたもご参考に。やれやれ、当夜のユアサが、そうでした。
とにかく、チョコレートで覆われたすいかのデザートを2人で堪能するフィナーレまで、格別なディナーを心から楽しみました。ニューヨークのレストランの名店が、これほどトレンディなスイーツを提供する波及効果の大きさは想像がつきません。
アメリカのスイーツの世界は、多面的な競い合いが驚くほど華麗に繰り広げられ、まさに、スーパースイートにファンシーなのです。
思い返すと日本での学生時代、ユアサは「おいしいものを食べるかい」
という名前の会を創設し、会長に就任、1年後輩を副会長に任命しました。しかし、会員が集まる前に、会はフェードアウエーしました。
ぜひ日本の女性の方々に、おいしいものを発見するヒントとなるように、ニューヨーク最新トレンドを伝えていこうと、心を入れ替えたユアサがお届けしました。 (了)
①彼女の選んだレストラン
・・・・ここで、ユアサの一口メモです。一般に、アメリカで良いレストランは、どこでもそうですが、地元の余程の顔なじみ客ならともかく、アメリカ人客に対しても予約したご本人かどうかの本人確認をしっかりする店が普通です。日本からの観光客の方は、レストランに限らず、パスポートを携帯していないと不便なことが多くなってしまうでしょう。すり等の被害にあわないため、パスポートをホテルのセーフティボックスにしまいっぱなしというわけにはいきません。こうしたレストランへの予約や道の案内は、ホテルの親切なコンシェルジュにお願いするのが良いと思われます