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連載第36回 「ニューヨークの熟女たち、その巨大すぎる影響力」

全米のパワーとマネーの中心と呼ばれるウォール街では、仕事の性質上、経験と実績がものを言うので、100歳の弁護士でも現役で活躍する「熟年社会」です。
これに対して、ニューヨーク・マンハッタンは熟女が圧倒的パワーを持つ「熟女社会」です。なぜなら、熟女たちの経験と見識こそが、マンハッタンに太陽のようなまぶしい真のオーラをもたらしているからだ、と国際弁護士ユアサは明言します。

 

ニューヨーク州上院議員だったヒラリー・クリントン(前国務長官)や、ニューヨークの公共教育に長年大いなる貢献をしてきたキャロライン・ケネディ(現駐日アメリカ大使)の奥ゆかしい魅力は、日本ではスーパーセレブの面からのみ理解されがちですが、同時に彼女たちはニューヨークという素晴らしい「熟女社会」の象徴なのです。

 

このニューヨーク熟女社会のオーラパワーの持つ意味をわかりやすく説明するために、「クリントン大統領夫妻の、リムジン車窓から、通りを眺めながらの会話」というアメリカン・ジョークを紹介します。

 

夫のビルが妻のヒラリーに言いました。
「ヒラリー! もしも、たとえばだけど、さっき通り過ぎたガソリンスタンドにいた男性と君が、昔、結婚していたならば、君はファーストレディにはなれなかったね」
すると、ヒラリーがすかさず、
「それは違うわ、ビル! もしも、私があのガソリンスタンドにいた男性と結婚していたのなら、今ごろ、私が彼を大統領にしているわ!」
「・・・・・・」

 

このアメリカン・ジョークは、ニューヨーク熟女の代表・ヒラリーこそが本当の実力者であるという意味です。
しかし、国際弁護士ユアサは、このジョークには隠されたポイントがあると指摘します。夫のビルの軽口に妻のヒラリーがピシャリと返した後、「・・・・・・」と夫が無言のところがとてもオシャレなのだと、ユアサは分析します。

 

ここでの無言の意味は、夫婦やカップルでいうと女性の方が実権を握っており、それこそが2人の間では当たり前であると同時に、社会でも常識である、ということなのです。
このジョークは、クリントン夫妻というスーパーカップルを例にしながらも、ニューヨーク社会のあらゆるカップルに対して当てはまる日常を描き出しているからこそ、粋で面白いのです。
さらには、ニューヨーク熟女の支持を得られなければ大統領にはなりにくい時代である、という点もまたジョークの隠し味と言えるでしょう。

 

一方、ウォール街もニューヨーク社会ですから、「わが子など子供への投資こそ最高の投資である」という前々回の原稿でも書いた教育論も女性主導の面が強く出ているのです。
子供や子供世代を大切にすればするほど、「情けは人の為ならず」のように親世代が高齢になった時、成長を遂げた子供世代からブーメラン効果で親孝行の優しさが戻ってくる、というのがニューヨーク熟女の経験則であるようです。

 

さて、ニューヨーク社会が女性の影響力が強いもうひとつの理由は、社交ダンスです。
ユアサの長年の親友であるアメリカ人弁護士の妻(彼女もアメリカ人)はニューヨーク社交界の大立者のひとりで、ダンスにも造詣が深く、「タカシ! 社交ダンスの華は女性よ!」と、常々ユアサに語ってくれます。
社交ダンスはあらゆる局面で男性側が必ずリードする形になっています。なぜなら、彼女のダンス論のとおり、輝きとオーラを観客に向けて放つ見せ場のリーダーシップは100%女性が握っているからです。ニューヨークの社交ダンスの豪華絢爛たる長い歳月の蓄積は、ニューヨークの熱い人間社会の歩みそのものなのです

 

では、ニューヨーク熟女と若いアメリカ人女性たちのオーラを比べてみると、ニューヨーク社会はどちらに軍配を上げるのでしょうか?
正解は、もちろんニューヨーク熟女たちのオーラです。
若きオーラといえども、実績・実力両面で熟女のオーラにはかないません。ですから、熟女と対峙するのではなく、若い女性たちは熟女たちをロールモデルにしています。日本では「老いては子に従え」ですが、ニューヨークは正反対です。

 

前述の〝子供への投資のブーメラン効果〟という考え方を含めて、若い女性も共通する人生観を若い時期から抱いているのです。そうした人生観の蓄積が、さらにニューヨーク熟女の伝統のオーラとパワーを輝かせているのです。
子供世代と同性の支持、それに加え男性のサポートを確保している。そんなニューヨーク熟女の派手ではないが地道で大きな影響力は、あまりに巨大過ぎて、かえって日本から見えづらい場合があるようです。

 

これを別の角度から考えてみましょう。
アメリカを訪れた日本人観光客の中には、チップをめぐってレストランやカフェテリアの店員と後味の悪い体験をした人が増えているようです。サーブしてくれる店員がチップの額で機嫌が悪かったり、高めのチップを要求したりするようです。

 

アメリカは完璧な個人主義社会なので、個々のアメリカ人の行動パターンを社会全般に広げて類推するのは不可能であろうと、ユアサは個人的には分析します。
アメリカのアルバイト社会なんて、さぞかし緩いんじゃないのか? という日本社会からの想像と違って、こうした若者たちはチップを一般的にちゃんと税申告しています。それは、将来の年金受給を若い頃からアルバイトしながら見通し、何十年という先々を十分に考えているからなのです。

 

これらアメリカ人の若者たちの発想は、ニューヨーク熟女を見習い、彼女たちの長年のライフスタイルも見習い、きちんと学んでいるなによりの証しです。
ニューヨーク熟女たちが、20代初めのころから高齢になったときの年金を考えて生活してきたというのは当たり前の常識である、と国際弁護士ユアサは確信しています。

 

日本であれば、合コンなど目先の楽しいスケジュールに追われるのが20代女性の一つの生活パターンであると仮に定義するとすれば、同じ20代のニューヨーク女性は、人生の先々の年金のことを考えて、先輩熟女の地道なライフスタイルを若いころから見習い、確実に実践しているのです。
今直ちに、日本社会でニューヨーク的な構図の実現を求めることは難しいかもしれませんが、日本の輝かしい熟女世代に本格的に見習おうと心に決めれば、日本の若い女性世代のオーラもさらに光り輝くであろうことは容易に想像がつきます。

 

こうしてニューヨーク女性の間には世代を超えた情熱的な同志の絆と強固な熱い連帯感があり、その象徴というべきニューヨーク熟女のパワーは、世代と時代を超える輝きとオーラを持っていると保証します。

 

ニューヨーク熟女の太陽のように巨大な輝きは限りなくまぶしいので、華麗なニューヨーク社交ダンス界のステップには、男性は女性と目線をたまにしか合わせないスタイルが数多いのですが、それもまたニューヨーク流のシャイなオシャレと情熱の極致であるのだと、国際弁護士ユアサは分析します。

 

(了)

 

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