ほぼ、毎日、お弁当を作っています。これを辻家では「朝弁」と呼びます。曲げわっぱの弁当箱に入れます。土曜も日曜もなく毎日続けるようになったのは、栄養のバランスを考慮し、また食べ過ぎないよう量をコントロールすること、そして、栄養が偏らないように野菜からお肉まであらゆるものを少しずつ食べさせること、を心がけてきたからです。
昼間は学校で給食が出ます。フランスですから当然洋食。ですから朝弁は和食に限定。何かで読んだのですが、幕の内弁当のようにいろいろなものを少しずつ食べるというのは栄養バランスに優れているようです。チャーハンやパスタしか食べないのは栄養が偏るのでよくないわけです。野菜、お魚、お肉などをバランスよく配置出来るので、弁当は最適。彩りも綺麗ですしね。でも、いろいろ具を揃えるのはひと苦労。前の晩の食材を最初から計算して作っておくと便利です。前の晩メンチカツだったら、翌朝、肉団子とかそぼろ煮にして入れるとか。青野菜を子供はあまり食べませんから、ほうれん草をおひたしにすれば量を克服できますし、甘めのにんじんきんぴらを入れておくと箸も伸びます。子供はカレーやハンバーグが好きですから、その中に野菜を大量に混ぜ込んでおくとか、工夫次第です。
うちはこのような努力を繰り返し続けてきました。そのおかげでしょうか、外食するときも息子は野菜から食べるようになりました。お弁当箱の中のものは全部食べるんだよ、と教えてきた成果です。完食したら「偉いね」と言います。お米を作るのがどんなに大変か説明してから、米粒一粒残さなくなりました。曲げわっぱの弁当箱で、和食弁当を毎朝食べさせるのには、もうひとつの理由があります。フランスで生まれた息子に祖国の味を忘れさせないため。いずれ、欧州と日本との懸け橋になってほしいですからね。そのためには日本のことをもっともっと好きになってもらいたいのです。もちろん、息子は言います。「納豆大好き、日本人でよかった」って(笑)。
さて、今日は「鮪の漬けカツ」なるものをご紹介いたしましょう。ふと思いついたので、半信半疑で試しに作ってみましたら、これがとっても美味しくて(笑)、息子も大喜び、辻家の定番になってしまいました。ともかく、ソースを作る必要がないので、おすすめです。
材料:鮪(300g)、醤油大さじ1、酒大さじ2、みりん大さじ2、かつおだし、もしくはあごだし(少々)、サラダ油、小麦粉、パン粉、卵です。まず、小なべに、醤油大さじ1、酒大さじ2、みりん大さじ2、あごだし少々を入れて沸騰させます。すると、生醤油の角が取れほのかにまろみが出るんです。粗熱が取れたら、保存袋に鮪とこの漬けダレを入れて、空気を抜き、冷蔵庫に。すぐ食べるのであれば醤油は大さじ2でも大丈夫です。半日ほど寝かせる場合、醤油は少なめがよろしいかと。パン粉をフードプロセッサーなどで細粉にします。目の超細かいパン粉になります(欧州のパン粉はこれなんです。目が細かいのでサクサク感が日本のとは異なります)。とんカツを作る要領で小麦粉をつけ、卵に潜らせ、パン粉を満遍なくつけ、強火でサッと揚げます。表面、裏面、素早く、素早くです。中はお刺身の状態がベストです。パン粉の色が変色したらすぐに取り出し、カットして完成。
これ、味がついているので、ソースはいりません。もし、足りなければゲランドの塩をパラパラ振りかけてください。お刺身のカツというイメージです。パンでも、ごはんでも、パスタにも合います。お子さん、お父さん大喜びの一品ですよ。
ボナペティ!
エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!
辻仁成/つじ ひとなり
作家。東京都生まれ。’89年「ピアニシモ」ですばる文学賞、’97年「海峡の光」で芥川賞、’99年「白仏」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。映画監督、演出家としても活躍。現在はシングルファザー、パリで息子と2人暮らし。