女子力という言葉があります。先日、とある新聞の取材を受けました。女性の記者さんでしたが、不意に「お料理が上手で家事をこなす辻さんは女子力が高いと評判ですが、秘訣は?」のような質問を受けました。個人的によく「女子力高い」と言われるのですが、これ、違和感を覚えます。ですから記者さんに「あの、女性自らが家事や育児は女性の役目と固く決めつけていませんか? あなたは女性でしかもメディアで働く方なのに、率先して女子力という言葉を使われている、そこがまず気になります」と返したのです。このことをツイートしましたら反響が大きく、多くの女性たちから、「同感です。女子力と煽てられて問題をすり替えられてる」「女子力つけないといけないのかといつも圧力を感じていた」「無自覚に使っていたので怖さに気が付いた」など多くの意見をいただきました。女性がいまだ不平等な世界にいることが露呈した格好です。
私が息子のためにご飯を作ることは女子力の高さからではないですよ。むしろ、息子への愛情の高さからだと言われたいし、この場合、“女子力”ではなく“生活力”かと思います。むしろ、“人間力”であり、当たり前のことじゃないでしょうか? 男は仕事、女は家事って、いったい何世紀前の世界の話か、とおかしくなります。
AFPが最近伝えた興味深い記事があります。フィンランド人男性の9割が家事をすることに抵抗がない。家事は男女半々一緒にやるべき、と考えているという調査結果。この意見、自分からすると普通なことです。何を今さらと思うのですが、こういうことが通じない世界もまだあるということなのでしょう。少なくとも、日本の女性の皆様が「女子力」というある種差別的な言葉から一日も早く解放されることを私は願ってやみません。家事や育児は男女が一緒にやれることです。私はシングルなので、すべてを一人でやっています。子育てや家事は待ったなしです。仕事よりも優先されることがあります。そのような大変さを抱えている人間に向かって、「女子力高いですね」と言われると、心の底で、安易な意見だな、と思わざるを得ないわけです。そんなつもりもなく、なんとなく記者さんは口にされたのでしょうが、少なくともメディアの方々こそ、この言葉を慎重に扱われるほうがよろしいのではないかと、かように思った次第であります。
さて、今回はギリシャのサントリーニ島を旅したとき、偶然に出合い、感動をしました「ギリシャ風ヨーグルトパスタ」を作ってみましょう。
まず、フライパンにオリーブオイル(分量外)を高さ1センチほどひき、輪切りにした玉ねぎを揚げ焼き風に色づかせます。お好みでバターも。コクが出ますよ。焦げる寸前で火からおろします。ボウルにヨーグルト(軽く表面に乳清がたまっていたら捨てる)1個125g程度(ブルガリアヨーグルトとかギリシャ風ヨーグルトがベター)、オリーブオイル大さじ3、生クリーム大さじ1、塩、黒こしょう少々を入れ、滑らかになるまでよくかき混ぜます。お好みでレモンをほんの少し搾りましょう。茹でたパスタをこれに絡め、お皿にもり、その上に飴色に炒め上がった玉ねぎをのせます。トッピングは自由に、小エビでも、パルメジャーノチーズでも。さらに黒こしょうを上からふりかけ、完成です。地中海にそよぐ風のような爽やかな一品となりますよ。あっさり、でも、クリーミーなヨーグルトのパスタ。女性に大人気です。
ボナペティ!
エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!