昨夜不意に「パパ、ぼくはクラスの子に差別されているんだ」と息子が言い出したのです。「日本は中国の一部だろって言われるんだよ。授業中とかに、わざとみんなに聞こえるような感じで。頭にくるよ」
それはフランス人が日本を馬鹿にする時によく使う言葉なんです。びっくりしたので「パパが抗議してやる」とちょっと大げさに言ってみましたら、息子が落ち着いた口調で、「いや、そんな必要ないよ」と返すではありませんか。
「その子はアフリカから来た子なんだよ。パパ、彼らはフランス人から差別を受けている。だから、自分が見下すことのできる相手を見つけてはそうやって真似てるだけ。彼の気持ちになってみてよ、自分だっていばりたいわけだよ。でもね、それは間違ってる。ぼくの方が体が大きいから喧嘩してもいいんだけど、そうじゃないでしょ?
彼がこのフランスの新しいお父さんとお母さんのところで我慢をして生きていることを思うと、日本人を差別したくなる気持ちもなんとなくだけどわかるんだよ。許せないけど、力でわからせることや、親が出て行って抗議することでもないと思うんだ。それに友達だから、ぼくがちゃんと間違いを教えてやるよ。
でも、彼がぼくを振り返って授業中に馬鹿にすることの中にね、今の世界の、ほら、テロとかさ、人を憎む気持ちとかが、うまれてくるわけだから、ぼくが悲しいのはそこなんだよ。
パパにそういう話を聞いてもらいたかったんだ。わかる? みんなが人を差別しないで、平和でいられる社会をね、ぼくは考えたいし、このアフリカの子といつか本当の友達になる方法を考えなきゃいけないねって、ただ、それを言いたかっただけだよ」
私は黙って聞いてあげました。そして、とっても安心をしたのです。この子は親に自分の今の気持ちを伝えたかった。ちゃんと自分の中に答えは持っていたんです。私は黙って聞きました。そして、最後に頭をごしごしこすってやり、いい子だね、歯を磨いて寝なさい、と言ったのでした。
さて、今日は日本が誇る浅漬けを一緒に作ってみませんか?
子供のころ、母親が毎朝このお漬け物を作っておりました。だから私は、ずっと、“浅漬け”は“朝漬け”だと思っていたんですよ。息子は浅漬けを食べませんが、私は親から学んだ浅漬けを作り続けております。今回ご紹介するのは、通常の浅漬けとその応用編です。
まずは、辻家の簡単浅漬けをご紹介しましょう。なんでもお好きな野菜で結構ですが、今日は根菜を使います。大根、蕪を適当な形に切ります。歯ごたえが好きな私は大きめにカットします。ビニール袋にカットした野菜を入れ、重さの2パーセント弱の塩をふりかけます。そこに塩昆布を一つまみ放り込んだら、ビニール袋の口を結んでモミモミ。冷蔵庫で30分くらい、で、完成です。浅漬け、買う必要ないですよ、こんなに簡単に作れるんですから。
辻家のちょっと風変わりな浅漬けもご紹介しましょう。作り方は前述とほぼ一緒ですけど、キャベツを使います。キャベツをザクザクッと四角い感じでカットし、ビニール袋に入れ、2パーセントの塩と塩昆布一つまみまでは一緒。そのあと、カレー粉一つまみ、ヴィネグレット(米酢でもOK)を小さじ半ふりかけ、気分次第でちょびっと粒マスタードとか、薄い一切れの青唐辛子なんかを。モミモミの後、冷蔵庫で30分。
モロッコとかアラブ圏にもおしんこがあって、ちょっと黄色くなっているので食べたら香辛料なんですね。ぜひ、挑戦してみてください。ま、でも、シンプルイズベストかな。
ボナペティ!
エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!
本誌連載の料理をえりすぐったレシピ本『パリのムスコめし 世界一小さな家族のための』も絶賛発売中です!