あの、突然ですけど、今、奥様はお幸せですか? 「幸せよ」ってはっきりと答えられる人ってどのくらいいるのでしょうね。「そうね、幸せと言えば幸せかもね」という方は結構いるかもしれません。他人から見ると幸せに見えていた人が突然離婚とかしちゃうこともよくある話です。他人事とは思えない話ですが、そういうニュースを見るにつけ、幸せってなんでしょうね、と悩んでしまうのです。
私ですか? 私のことは皆さんの方がよくご存じじゃないですか? ええ、幸の薄い男です。ま、自業自得もたぶんにあるのでしょうが、だからですかね、なかなか幸福というものの正体が見極めきれなかったのです。でも、ここ最近、ちょっとだけ、幸福というものの輪郭がわかってきました。驚くことを申し上げますが、今、私は幸せなんです。それは息子のおかげですよ。幸の薄い私ですが、息子にだけは出来る限りの愛情を傾けてきました。いい子に育っていると思います。
先日、先生方との面談があったのですが、皆さん、判を押したように、うちの子のことが大好きだと口を揃えてくれるんですよ。フランス人はお世辞を言いませんので、きっとそうなのでしょう(笑)。毎日、息子は大勢の友達を連れて帰ってきます。しかも、みんないい子たち。その親御さんらとも仲よくさせてもらっています。私は友達がいませんので、息子の友達の親御さんたちが唯一の友達と言っても過言ではありません。というわけで、気が付けば、息子を通して、私は幸福に囲まれているのでした。子育てというのは、そういうおまけが付随してくるものなんですね。幸せっていうものはきっと、自分だけの力で生み出そうと思って生み出せるものじゃないんです。幸せを探すといいますけど、幸せは探すものじゃなくて、こつこつ生きていれば遠くから訪ねて来るものかもしれません。
息子が成長する過程で、少しずつ我が家に集まってくる人が増えてきました。その人たちが我が家に温もりや、笑顔や、話題や、未来や、喜びを次から次に運んできてくれるのです。驚くべきことに。そして、草原に花が咲き誇るように、そこは幸福に包まれていったのです。ええ、確かに、それは私自身が作り出した幸せではありません。でも、結果として、私は幸せのおこぼれをたくさんいただくことが出来た。幸せとはそういうものじゃないのかなってつくづく思うのです。ある意味、おこぼれですよ。幸せを自ら生み出す人なんかいないんです。自分ひとりだけ幸せになれる人もいません。幸せだけは大勢の力で作り上げられ出来ていくものなのです。幸福ということばは単数形ですけど、本来は複数形なんだと思います。つまり、幸せたち、幸福たち、です。ひとりもがいて幸せを探すよりも、みんなで力を合わせ幸せを目指すのが一番かもしれませんね。
さて、今日はあっさりでも美味しい白菜の牛ひき肉メンチカツを一緒に作ってみましょう。材料:牛ひき肉200g、白ワイン大さじ2、卵2個、ビーフブイヨン(固形キューブの半分を少量のお湯で溶いたもの)、七味ひとつまみ、塩・こしょう少々、白菜150g、小麦粉大さじ4、パン粉適量、岩塩適量。
まず、ボウルに、牛ひき肉、白ワイン、卵1/2個、ビーフブイヨン、七味、塩・こしょうを入れ、粘り気が出るまで手もみする。そこに5・角くらいにカットした白菜(白い部分がよい)を投入します。おにぎりみたいに握ってタネの形を整えておきます。泡だて器で残りの卵と小麦粉を溶いた卵液にくぐらせ、パン粉をつけたら180度の油で揚げて完成。
うちでは岩塩を振ってそのまま食べますが、芥子やソースで食べても美味しいですよ〜。玉ねぎで作るメンチとは一味違った優しい味と歯ごたえある食感の白菜の牛ひき肉のメンチカツです。
ボナペティ!
エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!
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