人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!
ある日、うさこの元に一箱の荷物が届いた。
え…!?
宇宙食在中…!?
そうだ。
わたしは日本の宇宙飛行士に宇宙にいても故郷のような食事で心穏やかに宇宙を満喫してもらい、さらに体にいい日本食で健やかに過ごしてもらうべく生まれたという「宇宙日本食」が一体どんなものなのかを調査すべく
東京浜松町にある『宇宙の店』に宇宙食をオーダーしたんだった。
しかしまさかこんな明らかなる宇宙食が到来するとは思ってなかったので
思わず届いた荷物を三度見しました。
そして…
これがその宇宙食です。
左から宇宙藻クッキー、スペースライスケーキ(おもち)、スペースカレー(ビーフ)、スペース羊羹(小倉)
とにかく見た目からスペーシーです。
こんなに銀色のフィルムで包まれた製品地上ではなかなか見ません。
さて、解明していきましょう…。
・スペースカレー(ビーフ)
JAXA(宇宙航空研究開発機構)とハウス食品株式会社による共同開発で、宇宙日本食として2007年に正式認証されたレトルトカレー。
中身を見てみましょう。
お分かりいただけるだろうか。
驚くほど普通のカレーです。
宇宙では味覚が鈍るそうで通常より濃いめの味付けにしてあるらしく
パックの半分もあれば立派なカレーに!2回に分けて食べられてとても経済的です。
無重力でも浮いていかないようにねっとり感を増して作っているらしいけど、そちらも全く気にならない程度。
ビーフやマッシュルームなど、ゴロっと入った具材の食感がよりカレーを楽しませてくれる。
なんだこれいよいよ普通のおいしいカレーじゃないか…!!!
しかしさすが技術を結集しているだけあって、
宇宙でも栄養を取れるように、ウコン、カルシウムなどの栄養素を多く含み、
封を開けなければ1年半も持つという優れものなので
非常食にもできます。純粋にすごいヤツです。
・スペース羊羹(小倉)
羊羹はJAXAと山崎製パンのコラボです。
実際に宇宙ステーションで使われているという気圧が変わっても破裂しない屈強なアルミ包材に仰々しく包まれた
標準サイズの羊羹…。
外装と羊羹で親子ほどサイズ感の差があります。
せっかくそれだけの能力を秘めた外装なのに、日本の工場で生まれて我が家まで届けられハサミで開封されるという無駄遣いの能力が不憫になるほどです。
中の羊羹もこれまた銀でツヤツヤしたスペーシーなフィルム…。
フィルムを剥くと…!
これまた普通のおいしい羊羹です。
「フリーズドライ」や「まずい」といった宇宙食のイメージを完全に払しょくする…これが宇宙日本食か…!
・スペースライスケーキ(おもち)
実際に宇宙飛行士が宇宙に持って行って食べたというスペースライクケーキ。
フリーズドライされたお餅を、水で戻してきなこをつけて食べます。
容器を取り出して、片側にきなこを入れ、もう一方に水を入れる…まるで知育菓子のようなワクワク感。
いざ、水につけてみると…乾燥したスポンジのようだったおもちにじわじわ水がしみこみ、ぷよぷよに…!
伸びた!!!
それにきなこをつけて食べれば…!
おいしい…!
もちかといえば、そんなにもちじゃない!もちじゃないけどすごくおいしい…!!
甘さのあるおもちに、甘さ控えめのきなこが絶妙にマッチ。
このぷよぷよ感は他の何にも例えがたい新食感。
まるで新食感のお菓子と出会ったかのようなドキドキ感…。
ぜひ一度お試しください。
わたしにとって宇宙食と言えば
小学生のころ宇宙食について学んだとき先生にもらったフリーズドライというイメージでした。
正直激マズでした。
まさか知らない間にこんなに地上化しているとは…!
宇宙という解明しきれない、途方もない広い空間のなかで
地球を眺めながらときおり故郷を思い出す…。
そんな宇宙飛行士の壮大な気持ちとは打って変わって
地上で食べる宇宙食は普通においしい食事でした。
他にも、サバの味噌煮やサンマの蒲焼きなど家庭的なメニューもあるとの情報。
宇宙食と地上での食事がこれだけ近づいているということは、
宇宙も思っているより身近になっているのかもしれない…。
米原千賀子
ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。