<この物語は、ある霊能力者をモチーフにして描かれたフィクションである。>その頃、母から借りた軽自動車の中では、助手席のシートに背を沈めて額に玉のような汗を滲ませる明美の姿があった。ほんの10分ほど前に健作を送り出してから、さほども経たない内に異変は起きた。古杉に覆われた参道が突然暗さを増して足元が揺れ始めたのだ。明美は「アッ」と声を漏らして、伸ばした腕の指先も定かではな...

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