「エンジェライト」……なかなかロマンティックな名前の石ですね。一般に「エンジェライト」というと、「硬石膏(こうせっこう)」という和名をもつ鉱物であるとされています。でも、少し詳しく調べてみますと、「エンジェライト= 硬石膏」ではないことに気づきます。どういうことかと言いますと、「エンジェライト」は「硬石膏」には違いないのですが、それはその一部の鉱物を指す名称だということなのです。

このことを端的に示しているのが両方の化学組成です。「硬石膏」は「CaSO4」であるのに対し、「エンジェライト」は「SrCaSO4」となっています。何が違うかというと、「エンジェライト」のほうには「Sr」という元素記号が頭につくのです。では、両方に共通する「CaSO4」とは何でしょう。「Ca」はよくご存知の「カルシウム」ですね。「S」は「硫黄(いおう)」を表します。最後の「O」はおなじみの「酸素」ですから、「CaSO4」の正体は、「カルシウムと硫黄と酸素が結合した鉱物」です。でも、よく見ると「酸素(O)」には「4」という数字が付加されています。「SO4」とは、硫黄1に対して酸素が4個結びついたもの。硫黄に水を加えると硫酸が生成されますから、「CaSO4」は「硫酸塩鉱物」であることを表わしています。「硬石膏はカルシウムの硫酸鉱物である」と言われるゆえんです。

Stone_081204_2では、「Sr」とは何の元素記号かといえば、「ストロンチウム(Strontium)」というあまり馴染みのない元素のことです。私は、実際に見たことはありませんが、専門書よると柔らかい銀白色の金属とあります。夏の夜空を彩る花火にも使われているそうですから、ちょっと意外ですね。すなわち、「エンジェライト」には元々の「硬石膏」にストロンチウムが含まれた鉱物であると言えるのです。では、元々の「硬石膏」とストロンチウムを含んだ「エンジェライト」にはどんな違いがあるのでしょうか?

まず、「硬石膏」ですが、ふつうの「石膏(せっこう)=Gypsum」との違いを知っておきましょう。ふつうの「石膏」は水分を含んでいて、これを60~80℃で熱すると水が蒸発し、白い粉末状の粉になります。これにもう一度水を加えるとまたもとの「石膏」に戻ります。彫刻などの型取りに使う石膏がこれです。

一方、「硬石膏」は英名を「Anhydrite(アンハイドライト)」と言い、この語は「無水物」という意味を表しています。つまり、「硬石膏」は水を含んでいない鉱物というわけです。したがって、ふつうの「石膏」のように水を加えたからといって「石膏」に戻ることはありません。そのようなわけで、よく言われるような「硬石膏は石膏が硬くなった鉱物である」といったものではなく、むしろ別の鉱物であると分類する鉱物学者も多いようですよ。

では、ストロンチウムを含んだ「エンジェライト」はどういうものでしょうか。実は、石の色に特徴があります。「硬石膏(アンハイドライト)」ではほとんどが白または灰色であるのに対して、「エンジェライト」は青みを帯びた灰色や青空の青といった、何とも言えない清楚な青系の色をしています。真珠に似た上品な光沢があるのも特徴です。

ただ、残念ながらジュエリーやアクセサリーにするには硬度が足りません。モース硬度で3.5という数値ですから、このままではキズがつきやすい、割れやすいといった問題があり、とても実用に耐えられないのです。したがって、世の中に流通している丸玉などのカット石は、ほとんど人工的な処理を施しているものが多いと思われます。

では、次回は「エンジェライト」のパワーストーンとしての横顔をいろいろな角度からお話ししましょう。