進路に悩む15歳の息子へ「自分の好きな人生を!」(JINSEIのスパイス!第57回)

【今週の悩めるマダム】

大学2年生でそろそろ就活が始まる息子が“給料は少ないけど趣味を広げられる仕事に挑戦するか、あまりやりたくないけど手堅い会社に勤めるか”で悩んでいます。私たち夫婦はずっと実家の家業を継いでやってきたので、アドバイスの仕方がわかりません。辻さんなら、こんな息子にどうアドバイスしますか?(千葉県在住・50代主婦)

 

フランスでは、中学校のころから将来の選択を迫られます。「そんなに早く自分の一生を決められるものじゃないのでは……」と、日本人の僕などは思うのですが、フランス人には“早いスタートこそが成功の秘訣(ひ けつ)”という考えがあるようです。たとえばシェフを目指す子たちは、中学時代から専門の学校に行き、レストランに就職します。15歳の息子は理系を選択し、今の高校に入りました。この高校の入試説明会では、校長先生がはっきりと「うちの学校では文学も音楽も図工も教えません。ひたすら理科と数学しかやりませんので、それを必要としない子は受験しないように」とおっしゃいました。

 

息子は音楽、文学、図工が大好きで、むしろ理科と数学は苦手なのですが、相当に悩んだすえ、最終的に自分の意思で、この高校への進学を決めました。フランスでは理系の方が圧倒的に就職に有利だからです。この高校のような“割り切った教育方針”というのが、実はフランスの強みかもしれません。彼らはエリートを生み出す教育法に長(た)けています。大きな国ではありませんが、早くから政治家を目指す子、科学者を目指す子、経営者を目指す子、と専門分野ごとに子どもたちを分け、勉強させるスペシャリスト大国なのです。

 

しかし、この教育法がすべての子どもたちに適合するとは思いません。当然、こういう中から落第者が出てきます。ちなみに、今年の秋、中学3年生の息子のクラスの生徒のうち11人が留年しているのです。クラスの3分の1の人数にあたります。そこで、僕は息子にこう言いました。「学校の方針を100パーセント信じてやる必要はない。人間には向き不向きというのがあるので、君には君に適した将来を選択する権利がある。義務より権利だとパパは思うよ」と。息子はじっと耳を傾けていました。そうして、僕はこう続けました。

 

「将来、お金を稼ぐ仕事がしたい、お金のためならなんでも我慢できる、と思うなら嫌いな仕事でもやればいいと思う。でも人間というのは、好きなことなら寝ずにやり続けられるけど、嫌いなものを押し付けられると心を壊す。そんなストレスを抱えると、自分の人生そのものが壊れてしまう。パパは一度も自分の仕事にストレスを感じたことはない。確かに大金持ちにはなれなかったけど、でも、豊かに自分の能力と向き合うことができている。もしもこの先、自分が選択した仕事のせいで心が壊れそうだと思うなら、それからでも遅くないので、その仕事や道から逃げなさい。そして、自分が楽しく、夢を持ってやれる仕事を探し、収入は減っても笑顔で生きていけばいいと思うよ。それは他でもない、君自身の人生なのだから」息子は大きくうなずき、「ありがとう、とても参考になったよ」と言いました。

 

【JINSEIの格言】

「パパは一度も自分の仕事にストレスを感じたことはない。大金持ちにはなれなかったけど、豊かに自分の能力と向き合うことができている」。進路に悩む息子に、そう言い聞かせました。

 

 

この連載では辻さんが恋愛から家事・育児、夫への愚痴まで、みなさんの日ごろの悩みにお答えします! お悩みは、メール(jinseinospice@gmail.com)、Twitter(女性自身連載「JINSEIのスパイス!」お悩み募集係【公式】@jinseinospice)、またはお便り(〒112-0811 東京都文京区音羽1-16-6「女性自身」編集部宛)にて絶賛募集中。 ※性別と年齢を明記のうえ、お送りください。

 

以前の連載「ムスコ飯」はこちらで写真付きレシピを毎週火曜日に更新中!

関連カテゴリー: