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【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第11回>

TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。

 

【今回の相談内容】

先月、父親が脳梗塞で倒れたとき、兄から「おまえは大した仕事はしていないんだから、仕事をやめて介護をしろ」と言われました。あまりに酷い言い方で、ずっと引きずってしまっています。私だって、自分なりに仕事は頑張っているし、結婚したてで子どももこれから…と考えていたところなのに。それも兄の妻は専業主婦ですが、「何もしません」と早々に宣言して一切介護には関わらない様子で。不公平な気がしています(34歳・会社員・女性)

 

【回答】

ああ、これはグサッときますよね。お兄さん、これは言っちゃいけないことです。でも、もしかすると「父、倒れる」という突然のことに、パニックになっていらしたのかもしれません。親が倒れるなんて子にとっては想定外ですから、慌てふためいて心にもない言葉をぶつけあってしまうようなこともあるでしょう。だから、とりあえずこの言葉は5割引きくらいで聞き流してしまいませんか。いつまでもリフレインして引きずっていても、そこから生まれてくるものは良くないものばかりのような気がします。

 

さて、親の介護という避けがたい問題に対処するときは、「私はどうしたいのか」をキーワードに考えを進めてみてはいかがでしょう。たとえば、あなたに手持ちのコマが10あるとして、お父さまの介護にどれくらい投入したいと思うか、です。それを考えるとき、お兄さんにぶつけられた言葉や、専業主婦の義姉がなにもしないと早々に宣言したことなどは(腹は立ちますが)、とりあえず蚊帳の外に出しておきましょう。ご自分の気持ちだけに意識を集中して、考えてみていただきたいのです。

 

考えた結果、介護に投入できるのは10のうち2だとか、0だと結論が出たなら、ケアマネさんにその旨を相談してみてください。世の中には、独居で在宅療養生活を送るケースも多々あり、対応策は十分にあります。だから、あなたひとりですべてを背負い込む必要はまったくありません。同時に、お兄さんや義姉に無理矢理やらせる必要もないのです。繰り返しになりますが、キーワードは「私はどうしたいのか」です。

 

それにしても、私たち子どもは親が元気でいるのが当たり前で、いつまでも一緒にいられると思い込んでいますが、実はそうではないのですね。貴重な「時間」を大切に。あなたのご相談をお聞きして、そう気付かせていただきました。

 

【プロフィール】

玉置妙憂(たまおきみょうゆう)

看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。

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